研究課題/領域番号 |
11J01446
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
當真 賢二 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(SPD)
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キーワード | ガンマ線バースト / 高エネルギーガンマ線 / 偏光 / 活動銀河核 |
研究概要 |
ガンマ線バースト(以下GRBと略す)とは、数十億光年の距離から数分以下の短時間、強烈なガンマ線が観測される天体現象である。その起源は不明な点が多く、活発な研究が行なわれている。本研究の目的は、これまでの私のGRB放射の理論的研究で用いた手法や得られたアイデアを拡張し、信頼のおけるバースト放射モデルを構築することである。それによってバーストを生成する相対論的ジェットの駆動機構を解明する。今年度はまず、全計画の中の短期的計画「高エネルギーガンマ線データによるバースト放射モデルの制限」に取り掛かった。自分が提唱している高エネルギー放射モデルに基づいて、フェルミ衛星による観測データの説明・解釈を行った。それは論文として受理された。この結果によれば、バーストは磁場によるものではなく、熱的な過程で生成されていることを支持する。残光の高エネルギーガンマ線についても詳細な理論的解釈を行い、論文として受理された。これら一連の研究結果について、国際研究会「High-Energy Astroparticle Physics 2011」で招待講演を行なった。同時に、長期的計画「偏光情報を用いたGRBと活動銀河核(AGN)ジェットの駆動機構の統一的解明」についても成果が得られた。広島大のカナタ望遠鏡チームとの共同研究を通じて、AGNジェットからの可視偏光の観測結果をいろいろなモデルで解釈できることがわかった。このことは国立天文台でのAGN研究会で発表した。また金沢大の観測チームが検出したGRBのガンマ線偏光の理論的解釈を行なった。この成果は論文として受理された。この結果は、バーストは磁場によるものであることを支持し、上記のモデルと矛盾しているように見え、新たな課題となった。さらに、長期的計画を実現すべく、AGNジェットについての知見を深めることにつとめた。受入研究者である高原教授との議論から、AGNジェット中の質量の起源について、いままでになかったアイデアが得られ、論文を作成した。これは今年度中に投稿予定である。またポーランドに1ヶ月滞在し、Sikora教授との議論の中で、AGNジェットの全エネルギーについて共同研究を始めることになった。偏光だけでなく他の観点からジェットの駆動機構の研究の端緒をつかんだことは予想外の成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
「研究の目的」に基づいて短期・中期・長期の3つの計画を立てたが、まず短期的計画を実現することができた。実際に論文として受理され、引用数も増えている。長期的計画についても、GRB偏光について金沢大の観測結果を使って理論モデルを発展させることができた。さらに受入研究者との議論や海外での研究滞在を通じて、AGNジェットの駆動機構に新しいアイデアが得られ、予想以上の成果となった。
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今後の研究の推進方策 |
GRBについては、今年度に論文化した自らの放射モデルからの帰結と偏光データの理論的解釈とが矛盾することがわかり、来年度の課題となった。いぜん金沢大の観測チームが他のバーストの偏光データを有しているので、引き続き共同で理論的解釈を行なう。バーストによってジェットの状態が違う可能性を探る。AGNジェットについては、今年度の研究によって、偏光の情報がジェットモデルをあまり強く制限しないことがわかった。同時に、高原教授、Sikora教授との議論を通じて、偏光以外の観点での研究の端緒をつかんだ。その方向性を引き続き発展させることで、本研究の中心課題であるジェットの駆動機構に迫ることができる。
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