研究課題/領域番号 |
11J01526
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
梅田 健一 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | DNA / 走査プローブ顕微鏡 / 周波数変調原子間力顕微鏡 / 電気二重層 |
研究概要 |
医学、製薬、バイオセンサーなどへの応用の観点から、溶液中におけるタンパク質の分子レベルでの構造解析、さらには局所電荷分布解析技術の開発が強く求められている。近年、周波数変調型の原子間力顕微鏡(FM-AFM)の技術革新が進み、液中においても微弱な力を検出し、原子・分子レベルでの表面形状計測が可能となってきた。超高真空中においては、KPFMと呼ばれる手法により、ナノメートルスケールでの静電気力計測は可能であったが、水中においては固液界面において電気二重層が存在するため、その静電的相互作用は複雑であり、容易ではない。本研究ではFM-AFMを用いた固液界面における局所電荷分布計測手法の開発を目的として行った。 実験ではモデル生体試料系としてlambda DNA分子を基板に吸着させたものを用いた。DNA分子は溶液中で負に帯電しており、正に帯電したpoly-L-lysineをコートした白雲母基板に静電的に固定させて用いた。作製した試料表面上において周波数シフトマップを行い、探針が試料に接近するとともに、分子上では周波数シフトが増加するのに対し、基板上では減少することが分かった。このことから分子および基板上でそれぞれ電気二重層斥力および静電的引力相互作用が検出されたことが分かる。分子上で得られた曲線より分子上の電荷密度を計算したところ、-0.2 C/m2であることが分かった。一方で、分子上のリン酸基のプロトンが全て解離しているとして計算した分子上の電荷密度は-0.3 C/m2であることが分かった。このことから固液界面における分子スケールでの電荷密度計測手法の開発に成功したと言える。エネルギー散逸測定で得られる散逸量から、分子上での電荷密度を見積もるためのアルゴリズムの開発にも取り組んでおり、学術論文や特許出願のために必要な実験データの多くの取得することに成功している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目標であった生体分子上における電荷密度計測に成功した。更には試料表面上における3次元的な電場の広がりも可視化することに成功しており、計画通りに研究は進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
生体分子の電荷密度計測手法の開発には成功したが、空間分解能は1nm程度であり、分子内の電荷密度分布を測定するためには、更なる改良が必要となる。今後、エネルギー散逸をフィードバック信号として用いるなどして、更なる空間分解能の向上を検討していく。
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