研究課題/領域番号 |
11J01564
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
北山 貴裕 京都大学, 数理解析研究所, 特別研究員(PD)
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キーワード | 位相不変量 / 3次元多様体 / 非可換環 / 表現 |
研究概要 |
本年度は、非可換な被覆変換群を持つ被覆空間から3次元多様体の位相構造を捉えることを目的として、同一曲面の間のホモロジー同境であるホモロジーシリンダーの成す代数構造の位相不変量ライデマイスタートーションを用いた研究、位相不変量ねじれアレクサンダー多項式が持つ対称性についての研究を行った結果、ホモロジーシリンダーに対する新しい研究手法が確立され、一般化されたアレクサンダー多項式の一つの基本性質が明らかになった。 1.非可換ライデマイスタートーションによるホモロジーシリンダーの成す代数構造の研究 ホモロジーシリンダーの成すモノイドに曲面群の可解商列に対応する新しいフィルトレーションを導入した。そして、第一Betti数が正である曲面に対して、それら特別なホモロジーシリンダーのホモロジー同境群が曲面の写像類群の異なる拡大を与えることを示した。また、第一Betti数が正である境界付き曲面に対して、曲面群の同様の可解商に自明に作用する既約なホモロジーシリンダーたちの成すモノイドが無限ランクのアーベル群を商として持つことを示し、当群からある無限生成アーベル群への準同型写像を構成した。 2.ねじれアレクサンダー多項式の次数とThurstonノルムの関係 Stefan Friedl氏、Taehee Kim氏と共に、値が精密化されたライデマイスタートーションに対する双対定理を示した。この双対定理によって、例外的な場合を除いて、3次元多様体のねじれアレクサンダー多項式の次数の偶奇性が常に表現の次元とThurstonノルムの積に一致することを示し、多くの場合に偶数になることが予想されていた問題を肯定的に解決した。応用として、ねじれアレクサンダー多項式を不定性を持たない形に自然に正規化する方法を与え、基本群の表現空間からの正則関数として不変量を捉えなおす視点を導入した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた高次アレクサンダー多項式の研究はまだ成果が得られていないが、その代わりに、2年目以降に計画していたホモロジーシリンダーの研究が大きく進展した。また、遅れることなく2年目に予定している計画に着手できるため、全体として、順調な進展と言える。
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今後の研究の推進方策 |
1年目に予定していたもののまだ成果が得られていない高次アレクサンダー多項式の研究については、2年目に専門家であるケルン大学のStefan Friedl教授と密接な研究打ち合わせをする予定である。また、2年目に計画しているねじれアレクサンダー多項式による結び目の種数の最良評価性の研究については、既に、いくつかの結果が得られており、今後も予定通り研究を進めて行く。更に、1年目に得られた成果牽講演等により積極的に発信することを心がけ、更に研究を深化させていくことを試みる。
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