研究概要 |
磁場閉じ込め核融合研究において経済的な核融合発電を実現するため重要な課題として浮上している電子異常輸送の起因である電子温度勾配(ETG)不安定性(ETGモード)駆動乱流の機構解明が求められている.初年度は,ETGモードの励起・抑制メカニズムを明らかにするため,基礎プラズマ実験装置を用いて電子温度,空間電位,電子密度の空間勾配を独立に能動的に制御し,ETGのみを変化させてプラズマ中の不安定性に及ぼす効果について調べた. 1.電子温度勾配による高周波不安定性(ETGモード)の励起 プラズマの電子密度,空間電位が一様な空間分布の条件下で電子温度勾配を形成し,その時のプラズマ中の不安定性に対する効果を調べた結果,高周波(~0.4MHz)揺動(ETGモード)の励起が観測された.その揺動強度は電子温度勾配が形成されている位置で最大となっており,かつ電子温度勾配度に比例して揺動強度が変化することが分かった,以上の結果より,電子温度勾配がETGモードを励起することを明らかにした. 2.ETGモードによる低周波不安定性(ドリフト波モード)の増幅 電子温度勾配と密度勾配が存在するとき,周波数~4kHzの低周波揺動(ドリフト波モード)が観測されており,揺動強度が電子温度勾配が形成された位置で増加していること,および電子温度勾配度に比例して揺動強度が変化することが分かった. 3.ETGモードとドリフト波モードの相関関係 バイスペクトル解析を用いてETGモードとドリフト波モードの相関関係を調べた結果,電子温度勾配が存在するときに二つの揺動の非線形結合度が強くなることを観測した.以上の結果から電子温度勾配によって励起されたETGモードが低周波揺動との非線形結合によってドリフト波モードを変調し,その揺動強度を増幅させることを明らかにした.
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