研究概要 |
磁場閉じ込め核融合研究において経済的な核融合発電を実現するため重要な課題として浮上している電子異常輸送の起因である電子温度勾配(ETG)不安定性(ETGモード)駆動乱流の機構解明が求められている.2年目は,直線磁化プラズマを用いて径方向のETGを形成・制御することによって高周波揺動(ETGモード)が励起され,低周波揺動(ドリフト波モード)がそれとの非線形結合で助長されることを明らかにした.さらに,電子温度空間勾配の変調に対するETGモードとドリフト波モードとの非線形結合相互作用について詳細に調べた結果,以下のことが明らかになった. 1.ETG変調に対するETGモードとドリフト波モードとの非線形結合 径方向のETGの強度がある閾値(▽T_e~0.7eV/cm)を超えるとETGモードの揺動強度が飽和し,ドリフト波モードの揺動強度が増大し始めることを観測した.さらに,ETGモード強度の飽和と同時にETGモードとドリフト波モードとの非線形結合度が急激に増加することが分かった. 2.ドリフト波モードとの非線形結合によるETGモードの径方向拡張 ミクロスケールのETGモードがドリフト波モードとの非線形結合によって,ETGモードの波長の約40倍程度径方向に拡張していることが明らかになった. 3.ETGモード飽和に起因するドリフト波モード変調に対する非線形結合の効果 ETGモードの規格化振幅強度が閾値0.4%(▽Te~0.7eV/cm)を超えることでドリフト波モードとの非線形結合が助長され,ドリフト波モードの揺動強度が増幅されたことから,ETGモードからドリフト波モードに非線形エネルギーが移送されたと考えられる.以上の実験結果は,ミクロスケールの高周波数のETGモードのエネルギーが非線形結合によって低周波の揺動に移送され,別の揺動励起に寄与しうることを初めて検証した実験である.
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