研究課題/領域番号 |
11J01648
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
渡邊 裕之 京都大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC2)
|
キーワード | アルツハイマー病 / 神経原線維変化 / タウ / イメージング |
研究概要 |
【目的】アルツハイマー病(AD)の脳内における主な病理学的変化として、βアミロイドタンパク質(Aβ)を主構成成分とする老人斑の沈着と、過剰リン酸化されたタウタンパク質(tau)を主構成成分とする神経原線維変化(NFT)の蓄積があげられる。NFTの蓄積は、老人斑の沈着に比べADの臨床症状に高い相関性を示すことから、tauの生体イメージングはADの病状診断に有効であると考えられる。本研究では、2-オキシインドール(2-OI)およびその構造異性体である3-オキシインドール(3-OI)を母核とした放射性ヨウ素標識化合物を新たに設計・合成し、NFTイメージングプローブとしての有用性について評価を行った。 【方法】クネーフェナーゲル縮合によって、数種の2-OIおよび3-OI誘導体を合成した。チオフラビンS(ThS)をリガンドとしたtau凝集体およびAβ(1-42)凝集体への競合阻害実験を行った。スズ-ヨウ素交換反応により125I標識体を調製し、正常マウスを用いた体内放射能分布実験により脳移行性および脳からの消失性を評価した。さらに、化合物の蛍光性を利用し、AD患者脳切片を用いたインビトロ蛍光染色を行った。 【結果・考察】ThSを用いた競合阻害実験の結果、2-OIおよび3-OI誘導体はAβ(1-42)凝集体に比べ、tau凝集体に対して高い結合親和性を示した。また、3-OI誘導体は2-OI誘導体に比べて強いタウ結合性を示した。種々の125I標識体を放射化学的収率17%以上、放射化学的純度95%以上で得た。正常マウスを用いたこれらの化合物の体内放射能分布実験において、OI誘導体は投与早期における高い脳移行性および脳からの速やかな消失性を示した。また、インビトロ蛍光染色実験において、3-OI誘導体はAD患者脳切片上に蓄積したNFTへの結合性を示した。以上の結果より、3-OI誘導体はNFTイメージングプローブとして機能する可能性が示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、NFTの主構成成分であるtau凝集体に対して結合性が報告されている2-オキシインドールおよびその構造異性体である3-オキシインドールを母核とした数種の新規プローブの合成を行った。その結果、3-オキシインドール誘導体は2-オキシインドール誘導体に比べtau凝集体に対して強い結合性を示した。Aβ(1-42)凝集体との選択性において改善の余地はあるが、NFTイメージングプロープに応用可能な新たな基本骨格を見いだすことに成功した点から、研究はおおむね順調に進展していると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度見いだした3-オキシインドールは、tau凝集体に対して強い結合性を有しているもののAβ(1-42)凝集体との選択性が低い。そのため、NFT特異的なイメージングを行うための更なる構造最適化を行う予定である。また、NFTイメージングプローブに応用可能な新たな基本骨格の探索を目的として、これまでの研究でAβイメージングプローブとして機能することを報告してきた数十種の化合物を用いたインビトロにおけるtau凝集体に対する結合性評価を行うことで、tau凝集体に対する特異性を評価する予定である。これらの検討においてtau凝集体に対して選択性の高い化合物を見いだし、より応用的な研究としてtau病変モデルマウスおよびAD患者脳切片を用いた検討を行うことを計画している。
|