今年度はハッサンケイフ・ホユック遺跡から見つかった埋葬人骨資料とそれに伴う装身具などの副葬品の意味について主に研究を行い、国際シンポジウムにて口頭発表を行った。 今年度も継続してトルコ共和国バットマン県ハッサンケイフ・ホユック遺跡での発掘調査に参加した。ここでは約1.1万年前の集落の痕跡が確認されており、初期の定住狩猟採集民がここに居住していたと考えられている。今年度の調査でも埋葬人骨が多く見つかり、これまで見つかった人骨は総計100体を数えるまでになった。埋葬人骨は当時の定住の度合いの高さを示すだけでなく、人々の死生観や儀礼のあり方を示唆する重要な資料である。 今年度の調査で得られた成果を元に、第二回国際ウルスダム考古学シンポジウムにて口頭発表を行った。シンポジウムでは周辺の諸遺跡の最新の動向を知ることができ、研究上とても有意義なものであった。今回発表した研究では、新石器時代の人々の副葬行為のあり方に焦点をあてた。埋葬の方法は人々の象徴的思考能力を考えるうえで重要な要素であるが、これが遺跡ごとに大きく違っていることを指摘した。石器の製作技術や住居の構造といった従来の研究では社会間の同質性が強調されることが多かったが、今回の最新のデータを元にした研究によって、むしろ儀礼などの分野では個々の社会が独自の発展を遂げていたと考えるべきだとの結論を得た。 現在はこの研究を論文にするための作業を行っている。また遺跡の発掘調査の報告書作成作業も並行して行っている。
|