研究概要 |
コラーゲンを基材としたscaffoldに関しては,コラーゲンのみとコラーゲンとβ-TCPを複合化させたscaffoldの圧縮弾性率を測定した.さらに作製したscaffoldを用いて細胞培養実験を行った.細胞培養期間に伴う庄縮弾性率の変化を検討している研究はほとんどないため,圧縮弾性率の変化と細胞実験による細胞数などの生物学的評価を考慮して,弾性率変化のメカニズムについて考察した.細胞による力学特性変化を調べるために一定期間ごとに圧縮弾性率を測定した.また,scaffoldのみを培地に浸漬させたものも圧縮弾性率を測定した.その結果,コラーゲンscaffoldの場合は培養14日まで減少後,細胞培養によって弾性率は増加し,細胞非播種群はそれ以降も増加はせず,ほぼ一定であった.細胞数,ALP活性においても,14日までは増加しているため,細胞による弾性率増加効果が示唆された.さらにALP活性も一定期間増加を示したことから,幹細胞の骨芽細胞への分化が行われていることが考えられる.一方,コラーゲン/β-TCP scaffoldは,初期弾性率においてもコラーゲンscaffoldよりも増加し,細胞培養後も高弾性率を維持した.また,細胞数も培養28日目まで増加を示し,ALP活性も同様に増加傾向を示したことから,β-TCPを複合化させることによって,細胞親和性が向上したことが示唆される.また,コラーゲン/β-TCP scaffoldにおいて,コラーゲンscaffoldと比較すると,細胞による細胞外マトリックスであるコラーゲン線維や基質小胞などの産出がSEM画像より顕著であることも分かった.したがって,複合系scaffoldにおける弾性率増加は,細胞増殖による影響のほかに,細胞による細胞外マトリックス産出による構造強化効果も影響していることが本研究より示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
材料の評価及び細胞培養実験による結果は当初の予定通り得られました.昨年新たに当研究室に導入されたリアルタイムPCRにより細胞の分化・石灰化等に関する遺伝子解析が可能となり,さらに詳細な分析が行えるようになったため,今後さらに追究し,実験結果のさらなる考察を行う予定である.また,基材とする材料をセラミックスにした新規生体材料の評価,細胞培養実験を行い,両者の比較検討を行う.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方針として,まずβ-TCPを基材としたscaffoldおよび,β-TCP scaffoldにコラーゲンを複合化させたscaffoldに関する基礎実験(圧縮弾性率・強度,表面観察)を行い,その後,ラット骨髄由来幹細胞を用いた細胞培養実験を行う.細胞培養実験より,新規材料の細胞親和性などを評価する(細胞数,ALP活性,細胞増殖挙動,遺伝子解析,染色等).細胞増殖挙動に関しては,FE-SEMを利用するが,細胞のほかに細胞外マトリックスにも着目する.得られた結果をもとに考察を行い,前年度までに実験したコラーゲンを基材とするscaffoldによる結果と比較検討を行う.特に,骨再生用のscaffoldであるから,力学特性に関する評価を細胞実験結果と絡めて総合的に評価を行う.
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