本研究ではπ及びσ共役系により連結した高周期14族元素ラジカル間の相互作用を明らかにすることを目的としている。本年度までにπ共役系についてはベンゼン環で2つないし3つのケイ素ラジカル中心を連結したオリゴラジカルを、またσ共役系についてはジシラン鎖で2つのケイ素ラジカル中心を連結したケイ素ビラジカルをそれぞれ合成、単離するとともにその基底多重度を明らかにした。 ここで、ベンゼン架僑体については、X線結晶構造解析により詳細な構造パラメーターを決定している一方、ジシラン架橋体については骨格ケイ素鎖のディスオーダーの影響で、構造的特徴について議論するために十分な質を持つ構造解析には成功していなかった。そこで本年度はケイ素鎖のディスオーダーを解消するためにケイ素鎖上の置換基が異なるいくつかのジシラン鎖架僑ケイ素ビラジカル種の合成を検討した。その結果、良好なX線結晶構造解析には成功していないものの、新たなジシラン鎖架橋ケイ素ビラジカル種の合成に成功した。これまでに合成したケイ素ビラジカル種は置換基により紫外可視吸収スペクトルにおける最長波長吸収帯の波長に差異が確認された。詳細については検討中であるが置換基の嵩高さがビラジカルの電子状態に影響を与えたものと考えている。また骨格の結合長はケイ素ラジカル間の相互作用について考察する上で重要な知見であるため、引き続きX線結晶構造解析の検討を行う必要があると考えている。
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