研究課題/領域番号 |
11J01777
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
上野 琴巳 神戸大学, 大学院・農学研究科, 特別研究員(PD)
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キーワード | ストリゴラクトン / 根寄生雑草 / アンタゴニスト |
研究概要 |
ストリゴラクトン(SL)は、根寄生雑草種子の発芽誘導や宿主植物の枝分かれ抑制活性など様々な作用を有する植物由来の化合物群である。SLの基本骨格はエノールエーテルで結合した三環性ラクトンとメチルフラノンから成るが、三環性ラクトン部分は様々な酸化修飾を受けており、それと生合成する植物種との関連性は今のところ見出されていない。そこで本研究では宿主植物におけるSLの生理活性と酸化体の意義を明らかにするため、SL受容体のアンタゴニストや酸化酵素阻害剤を開発し、植物に対する影響を解析することを目的としている。本年度は受容体阻害剤のスクリーニングおよび研究に用いる植物体の選抜を行った。 宿主植物(イネ)や根寄生雑草(Striga hermonthica,Orobanche minor)に対して、高いアゴニスト活性を示さなかった化合物のアンタゴニスト(阻害)活性を調べたが、そのような活性を示す化合物は得られなかった。しかしSLの構造を厳密に認識するStriga gesnerioidesに対して、宿主であるササゲが生合成しているSLと同じ立体を有した化合物はアゴニストとして作用する一方、他の立体異性体はアンタゴニストとして作用することが明らかになった。これに生物種が限定されているものの、SL受容メカニズムにおいてアンタゴニスト活性が確認された初めての報告である。 一方、SLの酸化修飾の意義を確認するためには、SL酸化物を高生産している植物体を選抜する必要がある。そこで様々な植物体を用い簡便にSLを得るための水耕栽培方法及び抽出方法、分析方法を確立した。結果、水耕液回収から分析まで1~2日で行えるようになり、また各SLを主に生合成している植物体を選抜することができた。更に従来の分析方法を改良することで、既知のSLだけでなく未知のSLを生合成する植物を見つけることができるようになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
根寄生雑草種子に対する受容体阻害剤を開発し、宿主植物が生合成するSLの分析系は確立されたが、宿主植物へ投与する化合物の選抜には至っていないため。
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今後の研究の推進方策 |
SL受容体が未だ不明であるため、ドッキングシミュレーションによる受容体阻害剤候補化合物のスクリーニングを行わない。また所有している化合物からも受容体阻害剤を選抜することができなかったため、一旦化合物のスクリーニングは中止する。その代わり、現時点で最も研究が進行しているSL酸化体の生合成・代謝に重点を置くことにし、今年度確立した分析系を用い、in vivoでのSLの代謝を確認する。また同様の試験系を用い、酸化酵素阻害剤のスクリーニングを行う。
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