研究課題/領域番号 |
11J01818
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
小宮 怜奈 国立遺伝学研究所, 実験圃場, 特別研究員(PD)
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キーワード | small RNA / ARGONAUTE / 生殖 / RNA-IP |
研究概要 |
生殖細胞の発生の維持に重要なMEL1はARGONAUTE(AGO)をコードしている。AGOはsmall RNAと結合し、サイレンシング経路に関与していることから、MEL1がsmall RNAと結合し、生殖細胞の発現制御系の中心で機能する可能性が高い。そこで、RNA-IP(immunoprecipitation)によりMEL1と結合するsmall RNAを同定し、これらのsmall RNAを中心に、情報処理と実験検証により (1)MEL1-Small RNA生合成経路(2)MEL1-small RNA複合体の標的因子の探索を試みた。 (1)MEL1-small RNA生合成経路 MEL1と結合するsmall RNAの生成部位を明らかにするため、small RNAが多く集合している領域,クラスタの探索を行った結果、イネゲノム上に、1171個のMEL1-small RNAクラスタを同定した。クラスタ内のsmall RNAの形成過程を解析した結果、small RNAは、遺伝子間領域から由来した二本鎖RNAが、21塩基の長さごとに規則的に切断される生成過程が示唆された。さらに、MEL1は、これら21塩基small RNAの5'末端がシトシン(C)のものに、特異的に認識して結合していることが判り、植物の生殖細胞で機能するAGO,MEL1とsmall RNAの生合成経路を明らかにした。 (2)MEL1-small RNA複合体の標的因子の探索 免疫蛍光染色により、MEL1は生殖細胞の細胞質に局在することが明らかとなり、MEL1は、標的遺伝子の切断や翻訳抑制に関与している可能性が示唆された。そこで、マイクロアレイにより、mel1変異体で発現が上昇する遺伝子で、かつ、MEL1-small RNAの配列に相補的な遺伝子を抽出し、MEL1-sRNAのターゲットである候補遺伝子の絞り込みを試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MEL1-small RNAの生合成経路は、植物生殖細胞発生の維持に関与する新規のサイレンシング機構であることから、非常に重要な発見であると評価している。現在、MEL1-small RNAの生合成経路についての論文を執筆し、投稿準備にとりかかっている。また、異分野の年会に積極的に参加し新技術等の情報を収集し、MEL1の標的遺伝子の絞り込みを様々な手法により挑戦した。
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今後の研究の推進方策 |
MEL1-small RNAクラスタ領域内に、TOS17,T-DNAが挿入した変異体の種子稔性を評価し、生殖細胞発生制御への関与を明らかにする。また、DNAメチル化解析やChIP(クロマチン免疫沈降法)解析等により、small RNAクラスタ領域のクロマチン修飾を解析し、生殖ステージにおけるsmall RNAを介したエピジェネティックな制御機構の解明を試みる。 MEL1の標的因子探索は、UV照射によりMEL1と標的因子との結合を強化するCLIP(UV-crosslinking and immunoprecipitation)法を用いてMEL1と結合する標的遺伝子の単離を試みる。
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