研究課題
鳥や魚などの生物集団で規則だった群れ運動が知られている。近年、このような自発運動する粒子(自走粒子)の群れ運動の中に普遍的な性質があると期待され、大きな注目を集めている。自走粒子の運動において変形は重要な変数となり得ることが指摘されており、細胞などの運動において変形と運動に大きな相関があることが実験的に確かめられている。そこで平成25年度は当初の研究計画を元に、変形しながら運動するモデル実験系の開発を進めた。また、粒子の変形の時間スケールが運動の時間スケールと同等であるとき、回転運動が起こり得る。変形がランダムであるとき、この非線形効果は粒子の運動方向変化率の履歴として表れる。そこで、運動方向変化率の相関時間に対する群れ運動の依存性を実験的に明らかにするため、平成25年度中に高い微小管濃度で運動アッセイを行った。形状に対する運動の依存性を調べるため、平成24年度に複雑形状のゲルを作る技術を開発した。この技術を用いて平成25年度に一部分に白金触媒をもつゲルを作成し、白金を触媒とする過酸化水素水の分解反応をエネルギー源とするゲルの自発運動を実現した。このとき粒子の非対称性や形状に応じて、直進運動や回転運動などが起こる。このように平成25年度中に粒子形状と運動がカップルしたモデル実験系の構築に成功した。運動方向変化率が有限の相関時間を持つときの群れ運動のモデル実験系として微小管とダイニンを用いた運動アッセイを行った。その結果、微小管の密度を上げた時に起こる群れ運動が、微小管の長さやダイニン密度に依存していることを発見した。現象論的数理モデルを用いて解析したところ、孤立した微小管の運動変化率の相関時間を用いて実験で観察された群れ運動を再現できることを確認した。このように、平成25年度中に運動方向変化率の相関時間が現実の群れ運動の重要なパラメータであることを実験的に明らかにした。
(抄録なし)
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生物物理誌
巻: 53 ページ: 149-152
10.2142/biophys.53.149
The 17th International Conference on Minituriz ed Systems for Chemistry and Life Sciences (microTAS2013)
ページ: 630-632