研究課題/領域番号 |
11J01825
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
草野 友子 島根大学, 教育学部, 特別研究員(PD)
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キーワード | 戦国楚簡 / 中国思想史 / 古文字学 / 上博楚簡 / 清華簡 / 国際情報交換 / 中国:台湾 |
研究概要 |
1.戦国楚簡(戦国時代の楚の竹簡)の釈読と検討:本年度は、大きく三つのテーマについて研究を進めた。まず、以前より取り組んでいる清華簡(清華大学蔵戦国竹簡)の検討を行い、特に『祭公之顧命』と『保訓』について全体の釈読と文献的性格・思想的特質の考察を行った。これらはいずれも周王朝の重要人物の遺訓を記したものであり、周王朝の統治体制が窺えるものである。この研究成果は、2011年5月の島根大学での研究会合、および2011年7月・10月の中国出土文献研究会の国内研究会合(東京・福岡)にて発表した。さらに上博楚簡(上海博物館蔵戦国楚竹書)の第八分冊が公開され、その中の楚地域に関する文献『命』の釈読を行い、楚における政治思想について検討を加えた。 2.中国での実地調査と研究交流:2011年9月には、上海博物館・浙江大学における出土文物の調査、および現地研究者との交流を行った。上海博物館では、戦国時代の竹簡「上海博物館蔵戦国楚竹書」の実見調査と現地研究者との対談を、浙江大学では現地研究者との対談を行い、竹簡の詳細・研究状況・今後の公開予定等について聞くことができた。また、2011年5月には武漢大学において現地研究者と交流し、その後、2011年11月より一年間、武漢大学簡帛研究中心にて研究に従事することが決定した。簡帛研究中心では、出土文献と古文字学の専門知識を学ぶこととなった。 3.国際学会での口頭発表:中国の華中師範大学で開催された国際学会「辛亥革命与亜洲-東亜文化交渉学会第三届年会-」にて研究成果を中国語で発表し(「清華大学蔵戦国竹簡《祭公之顧命》初探」)、中国・台湾・韓国・欧米等の研究者と研究交流を行った。新出土文献研究は、海外において盛んに研究されているため、研究成果を国際学会で発表することには意義がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上博楚簡の第八分冊および清華簡に収録されている文献三篇の釈読および論文の執筆を行い、国際学会や、中国出土文献研究会の研究会合で発表を行った。また、当初の予定より二ヶ月遅れたものの、2011年11月から中国の武漢大学簡帛研究中心にて古文字学の専門知識の習得を開始したため、計画はおおむね順調である。ただし、本年度の研究成果については研究誌等への投稿・掲載までには至らなかったため、来年度の課題としたい。
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今後の研究の推進方策 |
2011年11月から研究拠点を武漢大学簡帛研究中心に移し、出土文献と古文字学の研究を進めている。古文字学の専門知識については甚だ不十分であるため、まずはその習得に努め、難読文字の古文字学的検討を集中的に行う。武漢大学での研究開始時期は当初の予定より遅れたが、研究計画や研究遂行上の問題はないため、引き続き研究計画に基づいて、思想史と古文字学との二つの観点から研究を行い、その成果を総合して中国古代思想史の再構築を試みたい。
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