研究課題/領域番号 |
11J01862
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
渡邉 雄一 千葉大学, 大学院・融合科学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | エレクトロクロミズム / 電気化学発光 / デュアルモードディスプレイ |
研究概要 |
本年度は申請した研究計画に基づき、様々なエレクトロクロミック(EC)材料と電気化学発光(ECL)材料を用いたデュアルモードディスプレイ(DMD)素子を作製し、DMD素子の特性評価及び駆動機構の詳細について検討を行った。 ECL材料をRu(bpy)_3錯体とし、EC材料として無機系の酸化タングステン、プルシアンブルー、導電性高分子のPEDOT、有機系のヘプチルビオロゲン、フタル酸エステル誘導体を用いてDMD素子を作製した。各系で反射型・発光型のDMD表示が可能であり、本DMDモデルの材料選択性の広さを示唆する結果が得られた。ビオロゲンではRu(bpy)_3錯体の励起状態からビオロゲンへの電子移動による消光反応によって発光型表示が得られなかったが、この問題点はビオロゲンを片側の電極上に固定することで改善可能と考えられる。作製した各DMD素子の中ではPEDOTとRu(bpy)_3錯体を用いた系で良好な特性が得られたため、このDMD素子について駆動機構の詳細な検討を行った。 PEDOT-Ru(bpy)_3錯体のDMD素子では交流ECL開始電圧が、Ru(bpy)_3錯体のECL素子の2.5Vに対して1.6Vに低下した。このDMD素子の駆動機構を解明するために、EC材料修飾電極とECL材料修飾電極に実際に印加されている電位を測定し、各電極上での反応を観察した。その結果、EC材料修飾電極上のPEDOTの酸化還元反応によって、交流1.6VでもECL材料修飾電極の電位はRu(bpy)_3錯体の酸化還元電位に達していることが確認できた。しかしながら素子特性の劣化が起こる電圧も低下しており、その際電極電位が電解液の分解電位にまで達していることも明らかとなった。現在はDMD素子の繰り返し耐久性及び発光特性を向上させるため、材料の量や電極形状がDMD素子特性に及ぼす影響について検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画の通り、DMD素子の駆動機構の詳細についての検討が進行している。実際に駆動中の素子の電極電位を測定できるようになったことで、各電極上で起こる反応を効率的に考察できるようになった。ECL材料として導電性高分子の交流ECLも確認し、DMDへの展開を目指して検討を進めているが、不活性雰囲気下でないと発光が起こらないため、基礎特性の検討に時間がかかっている。
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今後の研究の推進方策 |
現在のDMD素子の改善点として、(1)発光表示における交流ECLの発光強度、(2)反射表示におけるコントラスト比、(3)素子の繰り返し耐久性が挙げられる。(1)については、Ru(bpy)_3錯体以外の様々なECL材料を用いたDMD素子を作製、各DMD素子の特性の比較し、引き続きDMD素子の駆動機構の詳細について検討を進める。また材料の濃度や電極形状、電圧の印加パターン(波形、Duty比など)がDMD素子特性に与える影響についても検討を行う。(2)の向上のために、可視域の吸収が少ないECL材料の選出、または無色透明な交流ECL系の実現を目指す。(3)の評価のために不活性雰囲気下での発光測定系を構築し、導電性高分子の交流ECL特性についても検討を行う。
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