研究課題/領域番号 |
11J01864
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
渡邉 研右 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 特別研究員DC1
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キーワード | 鳥類 / 異物代謝 / シトクロムP450 / 種差 / 進化 |
研究概要 |
シトクロムP450(CYP)は薬物・異物代謝酵素として最も重要な酵素群であるが、そのワルファリン代謝能について鳥類間で大きな種差が存在すること、また、それによって化学物質感受性に大きな種差が存在することが示されている。しかしながら、鳥類においてCYP分子種に関する解析がほとんどなされておらず、異物代謝上重要な分子種も特定されていない。 本年度は、鳥類CYP研究の第一歩として、ニワトリにおけるCYP分子種の正確な分類と、肝臓でのmRNA発現量比較による重要な分子種の同定を行った。その結果、ゲノムプロジェクトにより同定された複数の分子種について命名が誤っていることを示し、その正確な命名を行った。CYP分子種別に見ると、CYP2ファミリーの遺伝子数が多く、その中でもCYP2C23a(旧CYP2H1)やCYP2C45などのCYP2Csが肝臓で大きなmRNA発現を示し、異物代謝酵素として重要な分子種・ファミリーであることが示唆された。 さらに、ワルファリン代謝に寄与していると予想される分子種CYP2C23について、野生鳥類を含めた8種類の鳥類で部分配列クローニングを行い、鳥類間で保存されているアミノ酸領域をエピトープとするポリクローナル抗体作製を行った。この抗体を用いタンパク質発現量解析を行ったところ、ワルファリン代謝活性ほど大きな種差が見られなかった。 本研究により、鳥類において注目すべき分子種としてCYP2C23、2C45が特定され、さらにCYP2C23について、鳥類種間では活性に見られるほど大きな種差が見られないことが明らかになった。よって、活性レベルで見られる種差がタンパク質の機能に由来するものと考えられるため、今後、タンパク質発現などによるさらなる検証が必要であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究実施計画に従い、CYP2C23について野生鳥種など複数の鳥類を用いたクローニングとタンパク質発現量解析を行うための抗体作製を行った。さらに、いくつかの種については完全長クローニングが終了しており、現在はタンパク質発現系の構築を進めている。また、鳥類CYP研究上欠かせない重要な分子種の同定を行うなど、来年度以降の研究をより大きく推進するための基盤を構築できた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究から、CYP2C23について、鳥類種間でタンパク質発現量ではなく、活性に種差が存在することが予想された。これは当初の仮説に合致するものであり、来年度以降は完全長クローニングとタンパク質発現により機能面での種差を明らかにする。また、Constitutive Androstane Receptorなどの異物受容体に関する解析を進めるため、典型的なCYP誘導剤であるフェノバルビタールやリファンピシンなどを用いた誘導能に関する評価を行なっていく予定である。
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