研究課題/領域番号 |
11J01889
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
山田 晋也 九州大学, システム情報科学研究院, 特別研究員(DC2)
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キーワード | スピントロニクス / ゲルマニウム / 分子線エピタキシー / ハーフメタル |
研究概要 |
本研究は、研究代表者らがこれまで開発してきた『分子線エピタキシー(MBE)法による半導体Ge上への高品質なハーフメタル薄膜作製技術』で得られた知見を基に、未だ実現例のないハーフメタル上への高品質Ge薄膜のエピタキシャル成長条件を開発する。本研究により、縦型スピントランジスタの基本構造となる、全単結晶『ハーフメタル/Ge/ハーフメタル』縦型構造の創製が可能となり、既に提案されている横型スピントランジスタでは技術的に困難な、『極短チャネル化』や『立体構造高集積化』を可能とする夢の超低消費電力デバイスの実現が期待される。 本年度は、その実現に向けた基礎プロセスの構築に注力した。先ず、作製技術を確立したGe(111)上のハーフメタル薄膜のアニール温度耐性を検証した。MBE法を用いてGe(111)上にハーフメタル薄膜を作製した後、MBE装置内でアニールし、その過程をMBE装置に搭載している反射高速電子線回折装置を用いて、試料最表面の構造状態を実時間観測した。その後、MBE装置から試料を取り出し、その試料の構造特性および磁気特性などを詳細に評価し、異種化合物形成の有無を確認した。これらの結果より、およそ300℃まで試料をアニールしても、界面で相互拡散を発生することなく、高品質な構造を保持できることが判明した。次に、ハーフメタルと同じ結晶構造の強磁性金属上にGe薄膜を成長する予備実験を行い、Geと接合する強磁性金属の最表面を人工的に制御することで、世界で初めて強磁性金属上にGe薄膜を高品質に単結晶成長させることに成功した。現在これらの成果を米国一流学術雑誌に投稿中である。次年度は、この結果を基に、最終目標であるハーフメタル上への高品質Ge薄膜の単結晶成長の実現を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究代表者は、本年度に計画していた目標は概ね達成し、同時に進めていた予備実験においても見通しが明るい結果を既に得ていることから、大変満足のいく進捗状況と言える。本年度に得られた研究成果は、米国一流学術雑誌に筆頭著者にて投稿中である。以上の理由により、自己評価は『(1)当初の計画以上に進展している』とさせていただいた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本研究の最終目標である、ハーフメタル上へのGe薄膜の高品質単結晶成長の実現を目指す。その後、『ハーフメタル/Ge/ハーフメタル』縦型構造を作製し、微細加工により縦型半導体スピン伝導素子を試作する。2つの強磁性電極の磁化配置に依存したスピン依存伝導の観測を目指す。
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