研究課題/領域番号 |
11J01917
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
安齋 千隼 東北大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 摂動QCD / QCDポテンシャル / 解析的評価 / 多重和 |
研究概要 |
まず、3ループQCDポテンシャルのMaster積分をMullin-Barnes積分表示を経由し、解析的評価するためのアルゴリズムの一部を構築した。具体的には、 (i)Mellin-Barnes表示されたMaster積分を、留数定理を用いて多重和に直す部分の改良 結果ができるだけ簡単になるように、contourの適切な選択や、微小パラメータによる微分から得られる式を用いた和の簡単なreductionなど行う。 (ii)各無限級数を評価するアルゴリズム 最終的に評価すべきものは、有理式、Γ関数、その微分を含む多重無限和であるが、(a)Γ関数がキャンセルする多重和、(b)特定の形のみのΓが残る(和のindexの入り方が同じΓが分子分母にペアで現れ、かつ、引数の差が微小パラメータを除いて半整数となるペアが1つ以下、それ以外のペアは差が整数)2重和では一般的な和が評価可能となった。3重和以上についてもいくつかの場合に評価可能である。 このアルゴリズムにより、必要な多重和の多くが計算可能となった。また、有理式とΓ関数の微分のみを含む多重和の評価法では原理的に任意の多重和が評価できるため、QCDポテンシャルの計算を超えた広い分野に応用可能であり、様々な計算の解析的評価が可能になると期待される。 次に、Master積分のうちいくつかを具体的に評価し、今までに知られている結果の再現を通したアルゴリズムのチェックと、まだ知られいていない値の計算を行った。分母に現れる因子が少ない積分は比較的容易に評価可能であり、既知の解析的な値や数値的な結果ともよく一致していることを確認した。また、解析的結果が完全には知られていないMaster積分のうち最も困難なものの一つである、分母に10種類の因子が現れるMaster積分に対し、構築したアルゴリズムを適用した。このMaster積分では、εでの展開係数は1次まで必要であるが、0次までは解析的な結果が知られており、その値を再現することができた。1次の係数は未だ知られておらず、現在その評価をしながら、高速化のための改良を緯けている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
3ループオーダーでのQCDポテンシャル計算に現れるMaster積分が予想以上に複雑なものであることが分かり、予定していたMellin-Barnes積分表示に留数定理を適用し、留数の無限級数を具体的に評価するという部分がより困難になったため。特に一部の無限級数が発散しており、その対処法を見つけるのに時間を要している。正則化のためにいくつかの変数を導入することになるが、最終結果を求めるためには、効率的な変数の導入の仕方や変数を残したまま計算を進める方法などを明らかにしなければならない。
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今後の研究の推進方策 |
Master積分の解析的評価のためのアルゴリズムがまだ完成していないため、引き続きその開発のための研究を続ける。また、一部のMaster積分はMellin-Barnes積分表示を用いた評価が非常に困難であり、それ以外の評価法もいくつか考慮する必要があると思われる。いずれにしても最終的には無限級数の評価に帰着されると考えられるので、先ずはそのためのアルゴリズムの開発を進める。特により高いオーダーでは複雑なΓ関数の積が多く現れてキャンセルしないため、その場合にも適用できる一般的なアルゴリズムの開発を目標とする。
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