研究課題/領域番号 |
11J01924
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
石堂 泰志 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 精密重合 / 交互共重合 / 分解性ポリマー / リサイクル性ポリマー / 酸加水分解 / 芳香族アルデヒド / ビニルエーテル / 再生可能資源 |
研究概要 |
本年度は、低環境負荷型の反応系として、「交互型ポリマーの合成、選択的分解、分解生成物の再利用」という、新規なケミカルリサイクル系の構築を目指し研究を行った。またその中で、「再生可能資源である植物由来アルデヒド化合物を用いたポリマー合成」も行った。 1.新規リサイクル性ポリマーの合成 昨年度、シンナムアルデヒドとビニルエーテルの交互共重合体の選択的分解反応により、共役系の拡大したエナール化合物が得られることを見出していた。このエナール化合物を用いてビニルエーテルと共重合すると、反応条件を適切に選択することで、副反応なく重合が進行し、構造の制御された交互共重合体を得られることがわかった。さらに、合成した交互共重合体は酸性条件下で速やかに分解反応を引き起こした。適切な条件下、交互共重合体は完全に分解され、約80%の高い選択性でさらに共役系の拡大したアルデヒド化合物を選択的に与えた。以上の結果から、生成するアルデヒド化合物の共役系の拡大を伴う、交互共重合・選択的分解からなる新規なケミカルリサイクル系を確立した。 2.植物由来アルデヒドを用いた分解性ポリマーの合成 ミルテナール、ペリルアルデヒド、シトラール、ノナジエナール等の天然に由来する共役アルデヒドとビニルエーテルの交互共重合により、選択的分解が可能な新規バイオマスベースポリマーを合成した。様々な側鎖構造のアルデヒドを用いて検討する事で、側鎖構造が共重合に与える影響を明らかにした。 3.様々な構造のエノールエーテルを用いた交互共重合と生成ポリマーの性質 様々な構造のエノールエーテルを用い、ベンズアルデヒド誘導体との交互共重合体を合成した。ビニル基の置換様式により、共重合性が大きく異なることがわかった。得られた交互共重合体は非常に優れた熱的性質を有しており、また適切な条件下で選択的分解が可能であることもわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では交付申請書に記載した、(1)新規リサイクル性ポリマーの設計、(II)植物由来アルデヒド化合物を用いたポリマー合成、を達成しただけでなく、(III)様々なエノールエーテルを用いた、優れた熱的性質を有する選択的分解が可能なポリマーの合成、を達成し、(IV)エノールエーテルないしアルデヒドモノマーの構造と共重合挙動との関連性を系統的に調べ、明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
上述のように、研究は当初の予定以上に順調に進んだ。本研究では新規な交互型ポリマー、分解性・リサイクル性ポリマー、バイオマスベースポリマーの合成を達成しただけでなく、モノマーの構造が共重合に及ぼす影響を系統的に調べ、明らかにした。このことから、本研究は今後の新規分解性ポリマー設計、ポリマーのシーケンス制御等の基礎的研究となりうる。既に本研究の成果を基に、外部刺激に応答する分解性ポリマーの合成、モノマー配列・分解性部分の導入が制御されたポリマー合成、に関する研究が始まっており、いずれの研究でも良好な結果が得られ始めている。
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