研究概要 |
本年度は乳児を対象に,近赤外線分光法を用いてカテゴリカル色知覚に関連する脳活動を計測する実験を行った.本年度では,まず行動実験を行い,乳児における緑・青の色カテゴリ境界の妥当性を確認した.実験では,ます成人被験者を対象に,マンセル色票を用い,カテゴリカルカラーネーミング法で緑・青の色カテゴリ境界を調べた.成人の予備実験で得られた色カテゴリの境界が,乳児にも該当するかを確認するため,5-7ヶ月児を対象に選好注視実験を行った.実験では,青と緑のカテゴリ間で交替するターゲット図形と,緑のカテゴリ内で交替する非ターゲット図形を対提示した.実験の結果は乳児がターゲット刺激を選好したことから,乳児に妥当な色カテゴリの境界を確認した. 次に5-7ヶ月児を対象として,「異なる色カテゴリに属す2色を提示する条件」と「同一の色カテゴリに属す2色を提示する条件」における脳活動の違いをNIRSによって測定した.NIRSのプローブは乳児の両側頭に設置し,左右半球の活動量を比較した.計測の結果,「異なる色カテゴリに属す2色を提示する条件」では,ベースラインと比べると両側頭の酸素化ヘモグロビンの有意な増加が示された.一方で,「同一の色カテゴリに属す2色を提示する条件」では,酸素化ヘモグロビンの増加は示されなかった.さらに,「異なる色カテゴリに属す2色を提示する条件」では、酸素化ヘモグロビンの増加は,左半球に比べて右半球がより高い傾向がみられた.本実験では,色カテゴリ間と色カテゴリ内の情報を処理する時に,乳児の脳血流反応が異なることをはじめて示すことができた. この研究成果について,日本視覚学会2011年夏季大会(九州大学,2011年8月)で口頭発表を行っており,現在査読付きの国際誌に投稿準備中である.
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今後の研究の推進方策 |
計画2年目の実験の遂行と,すでに得られた研究成果の公刊といった活動に重点を置いて研究を行う予定である.具体的に,NIRSの乳児被験者数を増やし,同じ結果が得られるかを検討することと,成人被験者が同様な刺激を観察するときに,乳児被験者と同じ脳血流反応がみられるかを検討する.さらに,得られた研究成果について,国内と国際学会で発表を行う予定である.
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