研究概要 |
本研究の目的は,横方向の移動運動での相転移が起こる速度を特定することと,相転移現象の発生機序を解明することである.研究計画書に記載した,実験1の相転移現象の再現性の検証に関して,再現性,信頼性を目的とした研究は行わず,相転移現象のパターンの分析のみを行った.低速度では全9名の被験者で両脚支持期があり跳躍期のない「walk」の様式がみられたが,約3.5km/h以降になると,7名は「gallop」,2名は「run」の様式がみられるという,速度依存的な2種類の相転移現象が確認された. 実験2のバイオメカニクス的手法を用いた研究に関して,9名の被験者よりデータを取得済みである.16台のカメラを用いた動作分析により運動学的特性を定量化する予定である. 実験3のエネルギー効率の研究に関して,速度依存的に選好される様式は,酸素摂取量の最も少ない様式ではなく,末梢の筋疲労などの影響も関与していることが示唆された.この研究に関しては方法論の見直しが必要であるとの判断より,再実験を予定している. 実験4の数理モデルによる検証に関しては,実験2と同データを用いて行う予定である. さらに中枢パターン発生器(CPG)の関与について調べるため,ストライド周期の変動に関する実験を行っている.「walk」,「gallop」,「run」ともに快適に行える速度ではストライド周期にフラクタルなゆらぎが確認されており.現在その結果について議論中である.以上のように本研究は未解析の段階のものが多いが,運動制御,運動生理,バイオメカニクス,といったさまざまなスポーツ科学分野で構成されている.それだけでなく相転移という観点から非線形現象研究なども関連している.この様な知見は,リハビリテーションの分野にも応用可能であり,また同様に,各種スポーツトレーニングにも活かすことができると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
今後は現在取得しているデータの解析を進め,国内外の学会で発表し,議論を重ね,国際誌に投稿していく.再実験,追加実験が必要な実験については随時データを取得していく.
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