研究課題/領域番号 |
11J02096
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
神園 巴美 東北大学, 大学院・農学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | ブトキシブチルアルコール / 筋肉タンパク質分解 / コルチコステロン / ヘミアセタール / 焼酎粕 |
研究概要 |
ブトキシプチルアルコール(BBA)は、焼酎粕の飼料化研究の中で発見された成長促進物質であり、麹発酵の過程で産生されると考えられている。本研究の目的は、BBAの作用機構をブロイラーの筋肉タンパク質代謝およびエネルギー代謝の両面から精査し、BBAによる代謝連鎖機構を明らかにすることである。本年度は筋肉タンパク質代謝に焦点を当てた。すでに、in vitroの実験系ではBBAが筋肉タンパク質分解を大きくは抑制しないとの事実を確認している。したがって、in vivoでは筋肉タンパク質分解を促進するホルモンである、グルココルチコイド(ブロイラーではコルチコステロン)の分泌および作用を抑制している可能性も考えられた。そこで、まず、血漿中のコルチコステロン濃度を調べたところ、合成BBA投与区で低下するという知見が得られた。続いて、焼酎粕および合成BBAの筋肉タンパク質代謝への影響について再度調査することとしたが、焼酎粕は入手サンプルの品質上と考えられる問題から、焼酎粕で観察されるはずの典型的な効果が再現できなかった。そこで、合成BBAに再度焦点を当てたが、BBAの作用が安定しないという問題が生じた。その原因として、BBAが不安定なヘミアセタールであり、アセタールの1,1-ジプトキシブタンに一部変換されているとの事実が判明した。そのため、当初の目的を達成するためにBBAのみを精製し、これがエタノール中では安定して存在することを確認した。さらに、ヘミアセタールおよびアセタールの相互変換についての調査中に、その構造変換はpHによっても規定されることが明らかとなった。BBAは弱酸性の甘藷焼酎粕中では安定して存在する。また、焼酎粕は抗酸化活性が高い。したがって、これらのことが、BBAの構造や作用の安定性に関係している可能性が考えられた。以上を考慮し、今後のさらなる研究展開のためには、より再現性の高い実験系を確立する必要性が生じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の遂行途上で、BBAの作用が安定しないという問題が生じた。そのため、当初計画していた筋肉タンパク質分解の抑制メカニズムの詳細を調べる前に、BBAの精製法を見直すとともに、BBAが安定して存在する条件を検討する必要性が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の展開中に、BBAの作用が安定しないという問題が生じた。その原因として、BBAが不安定なヘミアセタールであり、アセタールの1,1-ジブトキシプタンに一部変換されているとの事実が判明した。そのため、当初の目的を達成するためにBBAのみを精製し、これがエタノール中では安定して存在することを確認した。さらに、ヘミアセタールおよびアセタールの相互変換についての調査中に、その構造変換はpHによっても規定されることが明らかとなった。BBAは弱酸性の甘藷焼酎粕中では安定して存在する。また、焼酎粕は抗酸化活性が高い。したがって、これらのことが、BBAの構造や作用の安定性に関係している可能性が考えられた。以上を考慮し、再現性の高い実験系を確立するために、具体的にBBA単独および一定濃度の焼酎粕存在下でのBBAの作用の確認を考えている。実験系の確立後は、当初の計画に従って筋肉タンパク質代謝とともにエネルギー代謝への作用を調べる。
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