研究課題/領域番号 |
11J02128
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
岡田 悠悟 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 電界効果トランジスタ / 有機半導体 / 圧力効果 / X線構造解析 |
研究概要 |
有機半導体は次世代のエレクトロニクス材料として産業面から大きな期待が寄せられており、更なる高移動度化に伴う応用範囲の拡大という点からも、その伝導特性を決定するメカニズムの解明が待ち望まれている。有機半導体の伝導性は、π共役系有機分子間のπ軌道のオーバーラップに依存するため、圧力印加に伴う結晶格子の変化に対して敏感に応答する事が期待される。本研究では、電界効果によってキャリアを誘起された有機半導体界面の伝導特性を決定するメカニズムの指針を得るため、圧力印加による分子間距離の収縮を通して、有機半導体の輸送特性と結晶構造・分子構造の関係を調べた。 有機半導体電界効果トランジスタ(OFETs)の圧力下における輸送特性測定の手法を世界で初めて開発し、有機半導体の基本となるπ共役骨格のみで構成されたペンタセン、立体障害の大きいフェニル基を持つルブレン、大きな原子軌道を持つS原子を含むDNTTの3種類の高移動度有機半導体の圧力下の伝導性を測定した。また、有機半導体における輸送特性と結晶構造の関係を明確にするため、SPring-8 BL10XUにおいてX線構造解析実験を行い、加圧状態の結晶構造の情報を得た。さらに、X線構造解析から得られた格子定数を基に加圧状態の結晶構造の最適化を行い、各圧力における結晶構造から分子軌道計算を行った結果、輸送特性測定から得られた移動度の圧力依存性を支持する結果を得た。これらの実験によって有機半導体のキャリア伝導機構に対する結晶構造、分子構造の寄与をとらえた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
有機物と電界効果トランジスタ構造との圧縮率の違いによる均一な加圧の困難さから、今まで実験例が存在しなかった圧力下電界効果実験の手法を新規に開発し、様々な特色を持つ複数の有機半導体分子に適用する事に成功している。これによって論文2報、共同研究者も含めて5件の学会発表を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、1年目に確立した圧力下電界効果実験の手法を有機半導体のみならず、ドナー分子・アクセプター分子間の電荷移動によって様々な電子状態を発言する事が知られている有機電荷移動錯体にも適用し、圧力及びキャリア量の変調による電子相転移の制御についても研究する。電界効果によるキャリア注入によって電荷移動錯体のバルクの伝導に上乗せされた界面二次元電子系の伝導特性を正確に評価するためには、従来のバルク物性の測定より高精度な測定が要求される。このため、ロックインアンプを用いて電界効果で注入したキャリアに起因する伝導特性の変化量のみを検出できるように測定系にも更なる改良を加える予定である。また、電子相転移の探索に加え、キャリア密度・圧力・温度をパラメーターとして系統的に物性変化を調査し、有機物における低温電子物性の発現機構の詳細を調べる。
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