研究概要 |
本年度は、本研究計画の開始前に発生した2011年東北地方太平洋沖地震の発生を受けて、東北地方太平洋沖地震の発生過程に関する緊急の研究を中心に行った。当地震は、従来この領域において必ずしも発生が想定されていなかったマグニチュード9の巨大プレート境界地震である。そのため、地震発生後すぐに、東北地震発生直前の約10年間にプレート境界の状態がどのように変わってきたかをreviewした。そのうえで、東北地震は、宮城県沖で発生した異常に大きなすべりが、普段は地震時に破壊されない領域まで巻き込む広範囲の断層破壊を生じさせた、という簡単な断層力学モデルを提示した(Mitsui and Iio,2011,EPS)。この異常に大きなすべりがどのようにしてトリガーされたのかを考察し、その候補として、断層中に存在する間隙流体の摩擦発熱に伴う圧力上昇が有力であると考えた。そのようなメカニズムを宮城県沖の日本海溝間際に仮定した地震発生モデルを構築し、東北地震の発生過程に関する1つの考え方を明示した(Mitsui,Kato,Fukahata,and Hirahara,2012,EPSD。さらに、東北地震が発生する約8年前からその破壊域内で発生していたマグニチュード7級の地震、およびその余効すべりの幾何学的配置に着目した。それらによるプレート境界上での応力変化が、東北地震の初期破壊が巨大すべりをトリガーするまでの過程を手助けしたのではないか、というシナリオを3次元力学シミュレーションを用いて提示した。現在、論文投稿中である。この他、GPSデータの解析を行い、東北地震発生後から約20~30分後に三陸地方の沿岸で起こった系統的な沈降を見出し、それが津波の襲来によるものである可能性を議論した。こちらも論文は投稿中である。
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