研究概要 |
2011年東北地方太平洋沖地震の発生を受けて、引き続き東北地方太平洋沖地震に関する研究を中心に行った。東北地震の震源域では、数百年あるいはそれ以上にわたって蓄積され続けた弾性歪みのうち大きな割合が解放されたことが、データ解析から示唆されている(深畑・八木・三井, 2012)。我々は、プレート境界の浅部において間隙流体圧の摩擦発熱に伴う急激な断層弱化が発生したことがマグニチュード9(M9)の巨大地震に繋がったと考え、データ解析結果を参考としつつ動力学モデルからこの点に迫った。その結果、前震活動的なM7級地震による応力蓄積によって震源付近の破壊が海溝際に到達しやすくなり、それが海溝近傍の巨大すべりを(TPを介して)誘発したことが示唆された。応力蓄積が十分でなかった場合は、破壊伝播が震源周辺から深部側に留まり、地震の規模がM8級に終わったであろうことも示された(Mitsui et al., 2012)。また、東北地震の約10年前から東北地震の後にかけての東日本のGPSデータを基に、2003年の十勝沖地震の後から太平洋プレートの沈み込みが加速していた可能性を見出した(Heki and Mitsui, 2013).このメカニズムは、プレート境界地震の遠隔トリガーに関して今までにない観点からの説明を与えることが可能である.このほか、東北地震直後約1日間のGPSデータを用いて、世界で初めて衛星データによる地球自由振動の観測に成功した(Mitsui and Heki, 2012)
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