研究概要 |
平成23年度に行った研究については、大きく2つ「2010-11年のオーロラ観測データ解析」と「2011-12年の新規観測の立ち上げとそれに関連した装置開発」がある.平成22年度に本研究員はアラスカ州立大学フェアバンクス校と名古屋大学太陽地球環境研究所との協力のもと,フェアバンクス郊外に位置するPoker Flat Research Rangeの光学観測ドーム内に観測機器を2010年11月に設置し,2011年3月までリモート操作による定常観測を行った.解析は特に2011年3月4日(UTC)に観測されたイベントに着目して行っており,2012年4月の投稿を予定している.このイベントに関連した,主たる結果概要は以下の通り.[1]オーロラ発光層(110km高度)で100×100kmの空間スケールにおいて明滅周期が異なる複数のオーロラが同時に観測された.これは地表の磁力線を介して繋がる磁気圏のプラズマ構造が,衛星観測での報告よりも微小なスケールで不均質構造を持っている事を観測的に示唆している. [2]また,これら観測された4-7秒で明滅するオーロラの発光が1.5Hz程度の微細変動を内包している事が明らかになった。これらの微細変動の強度空間分布を2次元イメージとして導出したのは本研究が世界初である. これに加え,2011年9月の観測機器の撤収後,観測システムの最適化と,オーロラ2波長同時計測可能なフォトメータの開発を行った.オーロラ発光強度を2波長で同時取得することにより,オーロラを発光させる降下電子のエネルギーが推定できるため,オーロラの時空間変動特性とあわせて磁気圏の擾乱度の指標である降下電子エネルギーを調査する事が可能となる,2011年11月オーロライメージャーと新規開発したフォトメータをPoker Flat Research Rangeに設置し,現時点で20例を超えるオーロラが観測されているため,2012年4月中旬の観測終了までに統計的な解析に足るデータの蓄積が予想される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成22年度取得データの解析がほぼ完了し,学術論文に投稿予定,また,前年度の観測を受けて改良を加えた本年度の観測も順調であり,解析に十分な量のデータの蓄積が達成されたため.
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