研究概要 |
本研究では,脈動オーロラ(以下,PA)のスケール横断特性の統計的性質を議論するために,2011年12月から2012年2月に観測された53例のイベントの解析を行った.用いたデータはアラスカ州フェアバンクスにて昨年2011年11月末から2012年4月上旬まで行った高速EMCCDカメラ(視野49×49°,100fps)の地上観測によるものである.解析の結果,PAの高速変調成分は1.5-3.3Hzの周波数に分布し,先行研究であるRoyrvik and Davis.[1977]と良い一致を示した.また,これらの変調成分の周波数はPAの発光強度と比較的良い相関(相関係数0.52)が見られ,これは磁気圏におけるwhistler mode chorusの非線形成長理論における周波数掃引率と波動の瞬間振幅の関係から説明が定性的に可能であり,PAがwhistler mode chorusによって駆動され,その変調成分が波動粒子相互作用の活動度の直接的な指標となり得る可能性を示した.対照的に,PAのより長周期な明滅周期とPAの発光強度に相関は見られず,長周期成分が必ずしも波動粒子相互作用を直接反映するもではないことを観測的に示唆した.この結果に対する説明として,より長周期のcompressional mode waveが磁束管内のcold plasma densityを変化させることで,電子とwhistler mode chorusの共鳴条件を制御していることが考えられる.また,本研究によってPAのサブ構造中に変調成分が卓越することが多数のイベントに初めて確認されたが,変調周波数とサブ構造のスケールに明確な関係は見られなかった.両者の物理的な因果関係は今後の研究課題としてあげられる.
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