研究課題
CXCL10、CXCR3それぞれのノックアウトマウスに対して免疫複合体疾患(3型アレルギー)の動物モデルである逆アルサス反応を用いた。この実験系で血管炎を中心とした免疫複合体疾患における白血球の炎症局所への誘導に対するCXCL10とCXCR3の役割を解明したい。CXCL10、CXCR3それぞれのノックアウトマウスと野生型マウス、計3系統のマウスを用いて逆アルサス反応における炎症反応の程度を比較した。まず、ニワトリ卵白アルブミンをマウスの尾静脈から注射し、その直後に抗ニワトリ卵白アルブミンIgG抗体を皮下注射した。その後皮下における浮腫(注射から4時間後)の程度を評価した。これまでに行った実験で、CXCR3ノックアウトマウスでは野生型マウスと比較して浮腫の程度に明らかな変化はないものの、CXCL10ノックアウトマウスでは有意に浮腫の程度が減弱していた。また、浮腫を起こした部位を皮膚生検して免疫染色も含めて組織学的に検討したところ、好中球数は野生型マウスと比較してCXCL10ノックアウトマウスで減弱していた。さらに組織からmRNAを抽出してQuantitative RT-PCR法で発現量を調べたところ、IL-6やIL-1βといった炎症性サイトカインが野生型マウスと比較してCXCL10ノックアウトマウス減少していた。CXCL10とCXCR3はケモカインとケモカインレセプターの関係にあり、CXCL9,CXCL10,CXCL11がCXCR3のリガンドとなる。よって、仮説としてはCXCR3ノックアウトマウスでより逆アルサス反応が減弱すると予想していたが、実際には逆であった。その理由としてCXCR3は制御性T細胞にも発現しているためCXCR3ノックアウトにより炎症の抑制機構も同時に減弱することを考えた。ただ、現時点までの実験ではこの仮説が事実であるかについてはまだ検証できていない。
3: やや遅れている
CXCL10ノックアウトマウスの繁殖数が十分でなく、実験の律速となってしまった。CXCL10ノックアウトマウスでCXCR3ノックアウトマウスに比較してアルサス反応の程度が低くなる原因について仮説を立てたものの証明が手技的に困難であった。
CXCL10ノックアウトマウスでは大きくアルサス反応による炎症反応が減少するのに対してCXCR3ノックアウトマウスでは野生型と比較してアルサス反応の程度に有意な差がなかったという観察結果に対する原因を検索していく。現時点ではCXCR3を発現する制御性T細胞をターゲットとして考えているが、それ以外の可能性も検討していく。具体的にはアルサス反応を起こしたときの皮膚、リンパ節、脾臓においてCXCR3陽性制御性T細胞がどの程度の割合存在しているのかをFACSで調べる。組織中においてもCXCR3陽性の制御性T細胞の存在を免疫染色で確かめていく。
すべて 2012
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件)
Br J Dermatol
巻: 167 ページ: 1098-105
doi:10.1111/j.1365-2133.2012.11055.x.
臨床免疫・アレルギー科
巻: 58 ページ: 322-326
NAID40019440005