研究課題/領域番号 |
11J02179
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山口 啓太 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | テラヘルツ波 / スピン制御 / スピン再配列転移 / 磁性体 / フェムト秒パルスレーザー |
研究概要 |
オルソフェライトが示すと知られている超高速スピン再配列転移をテラヘルツ時間領域分光法で観察するために昨年度から構築中であった可視ポンプーテラヘルツプローブ光学系を完成させ、現在このシステムを用いてErFeO3のポンププローブ測定を実施している。このシステムを用いた測定により、磁気共鳴の共鳴周波数のシフトからレーザーの熱による定常的な温度の上昇を確認することができた。また、磁気共鳴のほかにEr3+の電子遷移がテラヘルツ時間領域分光で観測できることを新たに発見し、詳しい温度依存性などを調べた。この遷移の高強度テラヘルツ波励起による振舞いなどを調べていく予定である。 その他に、DyFeO3の単結晶の成長を行い、切り出した試料でテラヘルツ時間領域分光の測定を行った。この物質はErFeO3がしめすrotational typeの相転移とは大きく異なった、abrupt typeスピン再配列転移を示すことが知られており、その様子を調べる目的で測定を行った。まず室温での測定では以前測定を行ったYFeO3やErFeO3などの場合と同様に2つの磁気共鳴モードが見え、テラヘルツ波の偏光に対する各モードの励起条件も同じであった。また、低温での測定を行い、スピン再配列転移前後での共鳴の振る舞いを調べたところ反強磁性モードの共鳴周波数のソフト化など、ErFeO3の場合とは異なった温度依存性を示すことを確認でき、テラヘルツ時間領域分光を用いてabrupt型スピン再配列転移を観察できることを実証した。ErFeO3と同様にこの試料に関しても今後、より詳細な測定やポンププローブ実験、高強度テラヘルツ波による励起などを実施していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はポンププローブ光学系の構築を目指して研究を行っており、予定通り光学系を完成させることができた。また、新たにDyFeO3の単結晶の作成、テラヘルツ帯における基本的な物性測定なども行うことができた。 さらに、予定にはなかったが、ErFeO3における電子遷移の観測など興味深い結果が出ており、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、今年度完成した可視ポンプ-テラヘルツプローブ光学系を用いてオルソフェライトにおける超高速スピン再配列などの応答の観察を目指し、引き続き実験を行っていく。さらに新たに確認することができたオルソフェライト中の希土類イオンの電子遷移をターゲットとし、高強度テラヘルツ波による励起を行い特徴的なふるまいが観測可能か調査を進めていく予定である。
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