研究概要 |
・高次元ブラックホール解の構成および地平面付近の特異点の解析 5次元時空においては角度方向は3次元球面であるが,これがHopf bundleと呼ばれる構造をもつことに着目することでsquashed Kaluza-Kleinブラックホールというコンパクトな余剰次元をもつブラックホール時空を構成できることが知られている.本研究において,時空次元が奇数である場合には5次元時空の場合と同様にHopf bundle構造をもつ高次元のTaub-NUT空間を用いることで,7次元以上のブラックホール解へと拡張することに成功した.また,特徴的な事柄として時空次元が7次元以上だと事象の地平面に必ず曲率の特異点が存在することを示した.しかしながら,この特異点は有限サイズの観測者は通過できる程度の弱い特異性であり,地平面の拡張によってはブラックホール領域を議論することが可能となる.本研究では,そのような地平面の拡張の一例を与え,また,正の宇宙項を入れることで少なくとも十分初期の時刻においては特異点を解消できることを示した. また,ブラックホールの電荷と質量が等しいような場合には,余剰次元方向が直積となるようなブラックホール時空を構成することができるが,6次元以上の高次元時空では一般に事象の地平面に特異点が表れることに対する示唆を得た. 余剰次元のサイズが時間とともに小さくなるようなKaluza-Klein時空におけるブラックホールの厳密解を宇宙項を入れることなく構成し,その時空構造についても議論を行った.
|
今後の研究の推進方策 |
解析的なアプローチでコンパクトな余剰次元をもつブラックホール時空を構成するには,現在知られている限りブラックホールの電荷と質量を等しく置く必要がある。しかしながら,これまでの研究で得られた結果から推測すると,そのような状況下では事象の地平面上に特異点が表れると期待される.これを確認するために,より一般的な議論により,事象の地平面上の特異点の存在を明らかにしたい.
|