| 研究課題/領域番号 |
11J02183
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| 研究機関 | 京都大学 |
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研究代表者 |
栃堀 木綿子 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特別研究員DC2
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| キーワード | アルジェリア / 宗教間対話 |
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| 研究概要 |
本研究の目的はアブドゥルカーディルのジハードの指導者から宗教対話の実践者として、彼の存命の19世紀から今なおシンボライズされている背景と過程を明らかにすることである。当初の計画では2011年11月1日-11月31日にアルジェリアにおいてフィールド・ワークと文献収集を行う予定であったが、予定を変更し以下の二回でフィールドワークを行った。まず2011年1月9日-2月9日にフランス、イギリス、アルジェリアにおいて資料調査とフィールドワークを実施し、仏国立図書館、仏海外中央文書館、英国立文書館において資料を収集し、アルジェリアの現地でのアブドゥルカーディル再考の現状を調査した。続いて2012年11月7日-12月8日にフランスとトルコで資料調査およびフィールドワークを行い、仏国立図書館においてアブドゥルカーディルの闘争とフランスの植民地支配と現地でのキリスト教布教についての資料を得、イスタンブル総理府文書館では、アブドゥルカーディルが1860年にキリスト教徒を救済した事例に対する、スルターン・アブデュルメジドの感謝状等の資料等を確認し、彼が居住したブルサの調査も行った。2012年2月25-29日にはアルジェリアのトレムセンで開催されたアブドゥルカーディルについての国際会議に出席し発表を行い、現地や海外からのの研究者とも積極的に交流を行う機会を得た。これらからアルジェリアとフランスにおける彼の位置づけ、両者を架橋する象徴化について多くの知見を得るとともに、新聞資料を含む文献(アラビア語、仏語)を収集することができた。文献講読として彼が武装闘争敗北後にフランスに拘留されていた期間(1848-52年)に執筆された著作の一つ、『鋭い鋏』を通じて、キリスト教徒との関係における彼の思想について分析を試みた。本著作は彼が「戦士」から「思想探求者」へと変貌する転機であった拘留時代に、フランス人であるキリスト教徒に対して、イスラームを護教するために執筆され、戦時の和平協定締結、戦争捕虜の処遇など具体的事例から、イスラームが重要視する異教徒との契約の遵守について例証するものである。注目すべきことは同書が古典イスラーム学者の見解を引用しながらも、「人権」など近代的な概念を用いていることである。同書は、彼の葛藤を背景に、ジハードの行動の背景にあるイスラーム思想の一端を明らかにしながらも、同時に他者であるキリスト教徒へと開かれるイスラーム像を模索するものと位置づけられる。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
海外での資料収集は順調であったが、これまで収集した資料を消化しきれず、アブドゥルカーディルの宗教間対話の実像の分析についてまだ途上段階にあるため。この点が論文の掲載に至っていない大きな理由と考えられるので改善したい。
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| 今後の研究の推進方策 |
本年度は博士論文の提出に向けて日々まい進努力するのみと考えている。研究においては、アブドゥルカーディルの著作から彼の抱いていた他宗教観についてまとめるとともに、近代イスラーム世界へと通じるイスラームにおける宗教多元性の一端を明らかにする。用いる資料としてはこれまで収集した資料のうち、アブドゥルカーディルとキリスト教司祭との手紙の講読に特に重点を置いて分析する。
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