この研究の目的は、ゲージ/重力対応がどのように成立しているか、また、どこまで拡張が可能であるかを明らかにすることである。第3年目の研究では、これまでに研究を行ってきたブラックホールと流体との対応関係を中心に、対応関係がどこまで適用できるかについてより詳細に調べた。 まず、ゲージ/重力対応におけるブラックホールと流体との対応関係の拡張として、D0ブレインへの拡張について調べた。通常のDブレインでは流体はDブレインに沿った方向の空間に存在するが、D0ブレインは空間方向の広がりを持たない。このような場合であっても、特にブラックホールのhorizonに近い場合であればD0ブレインに直行する方向であっても流体との対応が現れることが分かった。 次に、我々は最も単純なブラックホールであるSchwarzschildブラックホールの場合について、流体との対応関係を調べた。ブラックホールと流体との対応関係についてはmembrane paradigmと呼ばれる理論がゲージ/重力対応以外の枠組みでも知られているが、特にBulk viscosityについてはゲージ/重力対応の結果と一致しないと思われていた。しかし、我々は第2年度の研究において、これらの結果が非圧縮性のために矛盾しないことを示した。そこで、第2年度の結果を踏まえて、流体に圧縮性を与える補正を考慮し、ゲージ/重力対応の手法を応用することでSchwarzschildブラックホールにおける物理的な圧縮に対する応答としてのbulk viscosityを計算した。 また、この他にlarge Nゲージ理論における非摂動効果に関する研究も行った。
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