研究課題/領域番号 |
11J02210
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
谷口 成紀 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 野菜茶業研究所・野菜育種・ゲノム研究領域, 特別研究員(PD)
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キーワード | ネギ / 遺伝資源 / 機能性成分 / QTL解析 / 着色性 / UVストレス |
研究概要 |
ネギにおいて遊離糖、ペクチン、含硫化合物(CSO)やポリフェノールなどは重要な品質構成成分であるが、これらの遺伝特性についてはほとんど解明されておらず、新規な成分特性を持つ品種開発を妨げていた。そこで、多様なネギ品種・系統の食味や機能性成分のプロファイルを明らかにするとともに、'下仁田'と'赤ひげ'との交雑後代(FAka集団)を用いたQTL解析を通じてネギ特有の成分蓄積に関連の強い遺伝子座を特定し、高品質ネギの開発に有効な選抜技術の構築を目指した。その結果、48品種・系統のネギ遺伝資源の糖、ペクチンおよびCSO等の成分組成が明らかとなった。一方、FAka集団の連鎖解析から14連鎖群、128マーカーが座乗する264cMの連鎖地図を構築し、連鎖地図上のマーカーの座乗染色体推定より8染色体への対応付けが完了した。また、FAka集団のQTL解析から、着色程度に関するQTLが第4染色体に対応する連鎖群Chr4a上に位置づけられることが明らかとなった。さらに、硫黄同化経路で働くAPSRやアントシアニン生合成経路で働くDFRとFLSなどの酵素遺伝子が連鎖地図のChr2a、Chr4a、Chr4a上に位置付けられるなど、品質関連遺伝子のネギ連鎖地図へのマッピングが開始された。最後に、光ストレス処理による機能性成分向上を可能にする栽培方法の開発のため、播種後2週の赤ネギおよび赤タマネギ幼苗にUV-A蛍光灯を暗期12時間照射して播種後8週まで人工気象器内で栽培を行ったところ、播種2~4週の期間にUV-A照射を行った赤ネギおよび赤タマネギは、他の期間もしくは常時照射した区と比べて葉鞘部のアントシアニン含量の増大がみられた。これらのことから、光ストレスによる機能性成分の増大技術として、育苗期の初期におけるUV-A照射が赤ネギおよび赤タマネギのアントシアニン増加に有効であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度冬期に収穫したEAka集団のQTL解析が完了していないものの、QTL解析用の分析はすべて完了したこと、ならびに、連鎖地図の高密度化のためのマーカー数の増加がすでに進行していること。また、遺伝資源の成分プロファイルが順調に作成されたこと、および、ネギ機能性成分増大のための光質制御処理技術の一端が明らかとなったこと。以上の点を考慮して、現時点で研究はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
ネギ遺伝資源の食味および機能性関連成分プロファイルの作成を次年度も継続して行い再現性を確認するのに加えて、夏どり栽培でのデータ収集を行うことでより幅広い成分の動態を明らかにする。また、詳細なマッピングを可能にするために連鎖地図作成に用いるマーカー数の増加を図るとともに、平成23年度冬期に収穫したEAka集団の成分データを用いたQTL解析を実施する。光質制御処理に用いる光源として紫外光以外の導入および照射期間の最適条件を検討するとともに、特走波長の光が植物に与える影響を選択的に調べることができるLEDの利用を検討する。
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