研究概要 |
本研究課題は、情動反応が注意の補足にどのような影響を与えるかを実験的に調べることである。よって、情動、注意、そしてこの2つの認知機能の相互関係を検証し、本研究課題を解明することが目的である。初年度は2つの研究を行った。1つ目の研究は、注意と情動の相互関係を調べる研究として、直視を含む視線変化における注意の補足を検証した。2つ目の研究は、注意に焦点を絞った研究として、他者の視線方向によって喚起される注意のシフトについて検証した。 1つ目の研究では、情動反応を喚起するといわれている直視(他者が自分を見ている視線)がどのような状態においてより注意を補足するかについて、心理学実験を用いて検証した。結果として、逸らし眼から直視になる状態が特に注意を補足することがわかった。よって本研究より、ヒトは他者から眼を向けられることが注意を補足しやすいことがわかった。(Ybkoyama et al.,Perception,40(7),785-797,2011)。 2つ目の研究では、他者の視線が向いている方向(例:左や右)によって喚起される空間的注意のシフトは、反射的に生じるのか(外因的要因)、それとも他者の視線方向を認識した後に生じるのか(内因的要因)について心理学実験と眼球運動解析(マイクロサッケードの解析)を用いて検証した。結果として、内因的要因説を支持する結果が得られた。よって本研究は、他者の視線方向によって喚起される注意のシフトは視線方向を認識してからでないと生じない事を示した。また、本研究ではマイクロサッケードを指標として未だ解決していない問題に取り組んでおり、このような試みは今まであまりなされていなかった。よって、本研究は視線方向と注意のメカニズムについての知見を寄与しただけでなく、注意の研究でマイクロサッケード解析が有効な手段であるということについても寄与したといえる。本研究は、国際学会Asia-Pacific Conference on Visionにて発表し、現在、論文投稿を準備中である。
|