研究概要 |
本年度は、学術誌へ論文を2件投稿した。また、2012年9月4日から9月20日までの約2週間、タンザニアにおいて現地調査を実施した。 論文"'New'Traditional Medicine on the East African Coast:ThePractice of Prophetic Medicinein Zanzibar"(『日本中東学会年報』28(2),pp.1-25)は、2010年3月に京都大学に提出した博士論文の一部を発展させて考察したものである。本論文では、ザンジバル(タンザニア)において「伝統的」とされる医療が、イスラーム復興の潮流に適応するように改良され、現在も盛んに実践されていることを明らかにした。 研究ノート「マカメ・ワ・マカメの民話」(『スワヒリ&アフリカ研究』24,pp.16-31)は、2012年9月にタンザニアで実施した調査の成果である。調査では、ザンジバル島の10カ所の村を訪問し、12人の調査協力者から、53話の民話を収集した。本報告では、それらの民話の中から、ザンジバルにのみ存在する「マカメ・ワ・マカメ」という人物が登場する民話16話を取り上げて分析した。その結果、ザンジバル人にとって等身大の「貧しいマカメ・ワ・マカメ」は、必ず民話の冒頭に登場し、聞き手が民話に対してより親近感を持つことができるように工夫されていることが明らかになった。また、聞き取った全ての民話は録音・テキスト化されており、今後のザンジバルの民話研究や方言研究に貢献できると考える。 以上の研究活動から、本年度は東アフリカ沿岸部における民衆イスラーム研究に加え、ザンジバルの民話研究についても成果を発表することができたと考える。
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