研究概要 |
平成24年度には,協力ゲーム理論における利得配分および提携構造形成を同時に解決するアルゴリズム,マッチング理論における制約付きマッチングのためのメカニズムについて研究した.具体的には,協力ゲーム理論については,Synergy Coalition Groups(SCG)という簡略表記法を用いて,利用可能な提携が制限される状況下における最適な提携構造(グループ分け)および利得配分を計算するアルゴリズムを開発した.このアルゴリズムでは,従来個別に解かれていた問題を,同時に解決することにより,従来アルゴリズムを組み合わせたものに比べ,より高速な計算が可能となっている.また,ここでの利得配分には協力ゲームにおいて研究されてきたコアという概念を用いて配分方法を決定するが,コアの条件を満たす配分方法が存在しない場合があった.そのため,SCGで表現された問題に対するコアの拡張として,弱εコア+という新たな解概念を提案し,この概念に基づく配分方法を計算するアルゴリズムを開発した. マッチング理論は研修医配属問題や,学校選択制等に応用されている研究分野である.このマッチングは,各自の利得が譲渡不可能であり,かつ可能な提携(マッチング)が制限されている提携形成問題と考えることができる.本研究課題では,制約付きマッチング問題として,病院や学校等の割当人数に関して下限(最低保証人数)が存在し,さらに病院や学校の集合に関しても下限が設定されている問題を扱った.この問題に関して,戦略的操作不可能,つまり偽りの選好を表明しても得をしないメカニズムの提案を行った.現在,これらの研究成果を国際論文誌,国際会議に投稿中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
提携形成/行動の最適化/利得配分の同時解決に向けて,本年度は提携形成/利得配分を従来より高速に行うアルゴリズムの開発および,それに適した新たな解概念の提案という成果を得た.また,マッチング理論を通して,利得の譲渡が不可であり,可能な提携が制限されている状況におけるアルゴリズムの開発も行った.マッチング理論は現実問題への応用が盛んな分野であるため,現実問題への応用に向けても成果を得ることができた.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は,特に可能な提携や利得の譲渡の可/不可という様々な制約が存在する状況下における提携形成問題について研究を行った.これらの研究においては,問題の表現方法は既存の表現方法を用いている.従来の表現方法では,行動の最適化に関する情報を表現することはできない.そのため,本研究の目標である提携形成/行動の最適化/利得配分の同時解決において,行動の最適化を適切に扱う事ができず,新たな表現方法を開発する必要がある.今後は,これらの研究を発展させ,様々な制約が存在する場合の提携形成に関して,その簡略な表現方法やアルゴリズム等の開発を行う.
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