研究課題/領域番号 |
11J02351
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岡野 夕香里 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | ダイコンモザイクウイルス |
研究概要 |
植物ウイルスは、様々な植物に感染して病気を引き起こす。しかしながら、植物ウイルスは宿主植物の代謝系に大きく依存して増殖するため、ウイルス病を直接治療する手段はなく、感染植物の早期特定・除去や媒介虫の駆除といった間接的な防除手段に限られている。したがって、植物ウイルスに対する新規防除法の確立は農業上の大きな課題となっている。本研究では、植物ウイルスに対する新規防除法の確立のために、植物ウイルスの感染機構、その中でも特に感染のもっとも初期の段階である複製の段階について分子レベルでの解明を目指している。 平成24年度は、セコウイルス科コモウイルス属に分類されるRNAウイルスであるダイコンモザイクウイルス(radish mosaic virus ; RaMV)を用いた解析を行った。RaMVはダイコンなどのアブラナ科植物に感染し、葉にモザイクや壊死等の病徴を引き起こし、作物生産に甚大な被害を与える植物ウイルスである。コモウイルス属に分類されるウイルスの多くは、マメ科植物に感染するが、アブラナ科植物には感染しない。このようなウイルスの感染性クローンはすでに報告されていたが、モデル植物であるアブラナ科のシロイヌナズナを用いた解析には用いることができなかった。一方、RaMVはシロイヌナズナに感染することから、植物宿主-ウイルス間の相互作用を解析するのに適した植物ウイルスである。そこでRaMV感染植物からゲノムRNAを抽出し、合成した全長cDNAを植物発現用ベクターに挿入し感染性クローンを構築し、シロイヌナズナへの接種試験を行ったところ、感染が成立することを確認した。そしてその成果を学術雑誌「Archives of Virology」に投稿し、さらに平成25年度植物病理学会大会において発表した。シロイヌナズナへの効率的な感染は、複製関連因子ハイスループットな検出系に必須であり、本研究において非常に重要な実験的基盤である。従って、本年度の成果により本研究は目的の達成に向け順調に進行している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度、ウイルスの感染性に関して得られた結果は、今後植物ウイルスの感染過程の中で複製の段階に関与する因子を特定する上で基礎となる重要な知見である。また本年度は、因子の特定に向け効率的なウイルス感染系を構築した。従って、おおむね順調に研究は進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、植物ウイルスの複製段階における解析を行うため、シロイヌナズナのプロトプラストを用いた単一細胞解析系の構築を行う。具体的には、シロイヌナズナの人工マイクロRNAライブラリーよりランダムに選んだ人工マイクロRNAをプロトプラストに導入し、ターゲットとなるシロイヌナズナの遺伝子がノックダウンされることを確認する。その後、ウイルスと人工マイクロRNAライブラリーを同時に接種し、ウイルスの増殖を確認することにより、複製に関与する因子を特定する。
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