研究概要 |
脂質二分子膜から構築され生体親和性の高いリボソームは、薬剤を内包・放出するDDS等に利用されている。本研究では、リボソーム表面を配位高分子で修飾することで、従来の合成手法では得られない安定性やモルフォロジーをもつ複合化リボソームの創出を目指し、新規配位高分子―脂質複合体材料の合成を行った。親脂質部位としてアルキル鎖を導入した膜親和性金属錯体(Mn(N)(CN)4(dabco-(CH2)n-CH3)-(1(n=15),2(n=17)を設計・合成した。1,2は分子のヘッド部位が4つのシアノ基を有し、隣接する金属イオンに配位することで平面配位ネットワークを構築することができる。DMPCと1、DPPCと2を任意の割合で混合して作成した複合体のDLSを測定すると、共に錯体の割合を増やすにつれてそのサイズが縮小することが分かった。更に、混合比2:1においては、1-DMPC複合体は筒状ミセルを形成した一方で、2-DPPC複合体は球状ベシクルを形成することが、cryo-TEM測定から明らかになった。これらのサイズ変化、またモルフォロジーの違いについて、それぞれの分子の臨界充填パラメータ(CPP)を用いて考察を行うと、脂質分子に対して錯体分子のCPPが小さいために、混合比を増やすにつれて複合体のサイズが小さくなったと解釈できる。更に、複合体としても1-DMPC複合体の方が、2-DPPC複合体よりも小さいCPPを持つため、前者が筒状ミセル、後者が球状ベシクルを安定化されたことが分かった。これら複合体にMn2+イオンを加えると、多面体型リボソームが得られ、脂質二分子膜表面でのシアノ基を介した配位高分子の形成、ならびに配位高分子による膜の曲率の支配が示唆された。この配位高分子の形成については、シアノ基の13Cに着目しHR-MAS固体NMR測定を用いて同定した。このような配位高分子―脂質複合体材料の逐次合成は他の配位高分子にも適応可能であると考えられ、今後の新規材料創出に対し、新しい指針を示すことができたと考えられる。
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