研究課題/領域番号 |
11J02361
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
ナナヤッカラ S 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 慢性腎疾患 / GWAS / QTL解析 / カドミウム / フッ素 / アフラトキシン / フモニシン / オクラトキシン |
研究概要 |
スリランカ東北部で原因不明の慢性腎疾患が多発しており、この医療問題が人的損失と医療費を増加させ、経済発展の阻害要因の一つとなっている。このような現状を打開するため、筆者は慢性腎疾患の原因を解明を行う。この研究は、京都大学医学研究科環境衛生学分野の小泉昭夫教授の率いる筆者等のチームとスリランカ民主社会主義共和国のペラデニア大学のDr.Nimmi Athuraliyaのチームによる共同研究である。この疾患の多発する要因として、遺伝背景と環境要因が関与すると思われる。慢性腎疾患の解明は、病理的検討、疫学的検討、遺伝疫学的検討という三つのサブテーマを通じて行い、予防施策の確立や早期診断に資する。 1)病理的検討:光学顕微鏡での観察は終了し、主要な病変は尿細管間質性障害であることを明らかにした。今後、電子顕微鏡観察を重点とする。 2)疫学的検討:慢性腎疾患の多発が認められるMedawachchiya及びGirandrukotteの2地域で患者対照研究を行った。現地医師の協力のもと、患者と対象の年齢および居住地をマッチングさせ、血液、尿、臨床情報を収集し、データベース化を行った。また、多発地域に居住する慢性腎疾患患者と親族から採取した尿中のカビ毒(アフラトキシン、オクラトキシン、フモニシン)の濃度を測定し、両者にオクラトキシンの検出率が高いことが明らかになった。多発地域での飲料水中の微量及び超微量元素含有量の分析により、腎毒性重金属であるカドミウムの含量は低かったが、中程度から高レベルのフッ素を含んでいた。 3)遺伝疫学的検討:2地域の疫学研究に参加した集団に対して、ケース288例及び対照293例の合計581例を対象に高密度チップを用いて全ゲノム網羅的相関解析(GWAS)を行った。(2)で得られた臨床情報を用いてQTL解析を行った結果、強い候補領域を見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
電子顕微鏡による病理的検討は、現在準備中ではあるが、光学顕微鏡での観察は終了し、主要な病変は尿細管間質性障害であることを明らかにした。疫学的検討では、多発地域における血液、尿、臨床情報を当初予定を上回る数を収集できた。遺伝疫学的検討では、581名を対象とした高密度チップを用いたスリランカ初のゲノムワイドの相関解析を行い、QTL解析の結果、候補領域を特定できた。
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今後の研究の推進方策 |
1)電子顕微鏡観察を重点とした病理検討を行う。 2)微量元素やカビ毒との発症との関連について、曝露調査が必要であり、フィールド調査により得られた資料について環境中の元素やカビ毒の検査を継続する。 3)多発地域におけるケース288例および対照293例を対象としたGWASとQTL解析の結果、得られた候補領域を確認のため、ケース8例および対照8例を対象にサンガー法によるダイレクトシークエンスとExome解析を行い、遺伝要因を明らかにする。
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