研究課題/領域番号 |
11J02391
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
阿部 祥子 北海道大学, 大学院・環境科学院, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 鉛直混合 / 対流 / Kelvin-Helmholtz波 / Tollmien-Schlichting波 / 内部重力波 |
研究概要 |
海洋において混合は熱塩循環や物質の輸送に重要な役割を果たしている。特に潮流が速い海域では、大振幅内部重力波が砕波することによって強い鉛直混合が生じている。大振幅内部重力波と混合の間の遷移過程では、内部重力波が引き起こす密度逆転による対流、シアーが不安定となって成長するKelvin-Helmholtz(KH)波、そして海底境界層が不安定となって成長するTollmien-Schlichting(TS)波が順に励起されることが、報告者の過去の鉛直2次元非静水圧モデル実験によって示されている。そこで今年度、この数値モデル実験結果からこれらの遷移過程による混合を調べた。その結果、対流とKH波が発達するにつれ、混合強度も時間と共に増加し、TS波の発達によって強い混合強度が維持されることがわかった。即ち、対流だけでなくKH波とTS波の発達も鉛直混合を強化していることが示された。以上の結果は、Journal of Geophysical Researchに投稿予定である。 加えて、上記の数値モデル実験結果に基づき、KH波とTS波が共鳴すること、対流とKH波とTS波の相互作用の可能性も指摘されている。これらの共鳴と相互作用は海底近くの混合に重要な影響を及ぼすと考えられる。しかし、上記の実験によって初めて指摘された現象であるため、これらの現象の性質や成長機構は全くわかっていない。そこで、鉛直2次元非静水圧モデルを用いた理想実験により、対流及びKH波がTS波の成長速度に及ぼす影響を調べた。その結果、対流及びKH波がTS波の成長速度に影響を与えることが明らかになった。この結果は、KH波・TS波の共鳴と対流・KH波・TS波の相互作用が力学的に可能であることを支持している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
鉛直2次元非静水圧モデルを用いた理想実験は計画通り順調に実施されている。加えて、計画ではKH波・TS波の共鳴の近似解を導出を行う予定であったが、その前に、対流とKH波、TS波それぞれの混合に対する重要性を示すために混合強度の評価を行った。従って、目的を達成するための計画はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
KH波とTS波が共鳴する条件と初期の発達メカニズムを解明するため、KH波・TS波の共鳴の近似解、及び数値解(線形安定性解析)を求める。そして、理論と鉛直2次元非静水圧モデルを用いた数値モデル実験結果から発達初期における鉛直2次元空間でのKH波・TS波の共鳴メカニズムを調べ、加えて発達初期における鉛直2次元空間での対流も加えた相互作用メカニズムの理解へ発展させる。
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