研究課題/領域番号 |
11J02416
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
深尾 亜喜良 神戸大学, 工学研究科, 特別研究員(PD)
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キーワード | RNAアプタマー / ソマトスタチン受容体 / SELEX / 腫瘍診断薬 |
研究概要 |
内分泌腫瘍の診断には、そのソマトスタチン受容体(SSTR)高発現性に基づき、RI標識したソマトスタチン(SST)およびSSTアナログを用いたSSTRを標的とする腫瘍イメージングが有効である。しかしながら、既存の治療・診断用物質は、標的となる腫瘍細胞表面のSSTRのみならず、正常細胞に発現しているSSTRとも交差反応する。また、SSTRにはSSTに対してほぼ同様の親和性を有するサブタイプが5つ存在する。そのため、診断精度・治療上の安全性に問題が指摘されて、サブタイプ特異的作動薬および診断薬の開発が期待されている。そこで、本研究では内分泌腫瘍の診断および治療薬のリード化合物として、各SSTRサブユニットを標的としたSSTR作動性RNAアプタマーの創製を試みる。RNAアプタマーは、RNA結合部位を持たない細胞表面受容体に対しても創製可能であり、抗体を凌ぐ結合力と特異性を持つことが可能である。また塩基の化学修飾により安定化させることで、細胞表面で機能させることも可能である。 本年度の研究では、得られたRNAアプタマーの作動性の有無を評価するために必要であるSSTR発現細胞系列の取得および得られた細胞系列を用いたSELEXを試みた。具体的には、SSTRが発現していないCHO(Chinese Hamster Ovary)細胞を使って、レンチウイルスを用いた手法によりSSTR発現細胞を取得した。また、得られた細胞系列において、実際に細胞表面にSSTRが発現していることを免疫染色・ウエスタンブロッティングによって確認した。さらに、発現しているSSTRがリガンドに対して作動性を有していることをカルシウムイオンの流入を指標に確認できた。そして、SSTR発現細胞系列を使ってSELBXを開始したが、現在のところSSTR特異的に結合するRNAアプタマーは取得できていない状況である。そこで、実際に細胞表面に発現しているSSTRと結合できない可能性も考えられるのだが、GST融合SSTR組み換えタンパク質を用いたSELEXも同時に進行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研穽におけるRNAアプタマーの取得に関して、アプタマーの作動性を評価できる系の確立が最重要課題であるといえる。本年度中に培養細胞を用いた系を確立させ、課題をクリアできたことは非常に大きな進展であると考えられるが、未だSSTR特異的なRNAアプタマーの取得には至っていないため、このような自己評価としている。
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今後の研究の推進方策 |
すでに述べたように、SSTR発現細胞系列を用いたRNAアプタマーの評価系は確立できたが、SSTR特異的なRNAアプタマーの取得は困難な状況におかれている。その理由として、細胞の表面積におけるSSTRの割合が圧倒的に小さいということが挙げられる。そのため、細胞表面に非特異的に結合するRNAアプダマーが多数を占めてしまい、SSTR特異的なRNAアプタマーが得られていないと考えられる。今後の対応策として、GST融合SSTR組み換えタンパク質を用いたSELEXを第一スクリーニングとして実施し、ある程度アプタマーの種類が絞られた状態で培養細胞系に移行するという方法を考えている。
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