研究課題/領域番号 |
11J02423
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
宮島 悠子 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 特別研究員(DC1)
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キーワード | ミズクラゲ / ポリプ / カワハギ / トップダウンコントロール / 捕食圧 |
研究概要 |
ミズクラゲの大量発生を防ぐ上では、成体よりもバイオマスの少ないポリプ期での防除がより有効であると考えられる。このことから、カワハギをはじめとするクラゲ食魚によるポリプ摂餌は、その後の成体の発生量を大きく左右する可能性がある。しかし、ミズクラゲが主に付着生活を送る冬季は海水温が低下し、魚類の摂餌行動は抑制されるため、その捕食圧がどの程度有効かは不明である。そこで、様々な水温下でミズクラゲのポリプに対するカワハギの摂餌速度を算出することで、本種によるポリプ摂餌の定量的な評価を目指した。 カワハギ当歳魚(11.9±0.8cm)に、40個体のミズクラゲポリプが付着したスライドグラスを10、15、17.5、20、25、30℃の6水温区下で提示した。供試魚がスライドグラスをつつき初めてから10秒後にこれを回収し、ポリプついばみ頻度(回/秒)、ポリプ摂餌速度(個体/秒)、および摂餌開始に要した時間(反応潜時)(秒)を算出した。 水温15℃区からポリプを摂餌する個体が散見され、20℃以上の区では全ての試行でポリプの摂餌が見られた。カワハギのポリプついばみ頻度およびポリプ摂餌速度と水温の関係を二次曲線で近似すると、ついばみ頻度は25.8℃で、摂餌速度は26.8℃で最大値を示した(それぞれ0.7回および3.1個体/秒)。反応潜時に水温区間で有意差は見られなかったものの、20℃以上の全ての水温区では100秒以内であった。このことから、適水温下でポリプと遭遇したカワハギはすみやかに摂餌を開始すると推察できる。冬季の若狭湾沿岸における典型的な海底水温は10~15℃であることから、真冬には低水温によってカワハギの摂餌活性自体が低下するものの、春~秋季にはカワハギによるミズクラゲポリプの摂餌が十分に起こり得ると考えられ,ミズクラゲのバイオマスの決定要因の一つとして、クラゲ食魚による捕食を考慮する必要が提言される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していたカタクチイワシを用いた個体発生実験については、カタクチイワシの受精卵が得られなかったため実施できなかったため実験を中止した。また、カワハギに稚クラゲを与える実験については、本年度十分な個体数の稚クラゲを得ることができなかったため、実験を延期した。しかしながら、カワハギポリプ捕食速度を検討した実験については、当初予定していた以上のデータが得られたことから(2)おおむね順調に進展している、と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度(24年度)実施を予定していたものの実施できなかった実験については来年度(25年度)に再度実施を予定している。カワハギのポリプ捕食速度については、本年度は短時間の摂餌速度のみの計測であったため、日間の摂餌速度を再度計測予定である。
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