研究課題
r(GGAGGAGGAGGA)という配列からなるRNAアプタマーのR12はプリオンタンパク質を高い親和性で捕捉する。申請者等は既にR12の立体構造をNMR法によって決定している。R12はG:G:G:Gテトラッド平面とG(:A):G:G(:A):Gヘキサッド平面をコアとした分子内平行型4重鎖構造を形成し、さらに2つのR12分子がヘキサッド平面のスタッキングを介して二重体を形成していた。次にプリオンタンパク質の結合部位を探索し、N末側の約100残基のディスオーダー領域における、アミノ酸番号25-35(以下P1)及びアミノ酸番号108-119(以下P16)の2つの部位であることを見出した。この2つの部位に対応するペプチドP1及びP16のそれぞれと、R12との相互作用をNMR法によって調べた。特にR12とP16については複合体の立体構造を原子レベルの分解能で決定することが出来た。R12の特異な位置に配置された3つのリン酸基とP16の3つのリジン残基がそれぞれ静電相互作用をしていること、R12のグアニン塩基とP16のトリプトファン残基がスタッキング相互作用をしていることを明らかにした。これと同時に、ウシプリオンタンパク質(bPrP)の107残基のN末端ドメイン(以下bPrP-N)とR12について、NMR法による相互作用の研究を行った。R12へbPrP-Nを加える滴定と、bPrP-NへR12を加える滴定の両実験から、R12とbPrPNは2:1の結合比であること、すなわち二量体として存在するR12とbPrP-Nは1:1め結合比であることを見出した。二量体であるR12の各単量体が、bPrPの2つの結合部位のそれぞれと同時に結合することで、高い親和性を獲得していることを示唆する結果を得た。現在これらの結果をまとめて学術雑誌への投稿の準備を進行させている。
1: 当初の計画以上に進展している
RNAアプタマーであるR12と、プリオンタンパク質の2ヶ所ある結合部位の内の1つに対応するペプチドとの複合体の立体構造の決定に成功した。もう1方の結合部位に対応するペプチドとも、NMR法によって原子レベルの相互作用の情報を得られた。さらにプリオンタンパク質のN末側ドメイン(R12との2つの結合部位を含む107残基からなるドメイン)とR12との相互作用に関する情報も取得し、R12がプリオンタンパク質を捕捉する全体像を構築することに成功した。
プリオンタンパク質のもう一方の結合部位に対応するペプチドと,R12との複合体の構造解析を行う。既に共鳴線の帰属を半数以上終えて、分子間NOEの情報なども取得しており、これらの解析を進行させる。さらにR12とプリオンタンパク質のN末側ドメインとの複合体の解析も進行させる。とれについては既に発現及び精製方法を確立し、^<13>C,^<15>N安定同位体標識されたN末側ドメインを取得した。今後R12との複合体について、共鳴線の帰属や分子間NOEの抽出を行う。この他、プリオンタンパク質全長の発現及び精製方法を確立し、R12との相互作用の情報を得ることを目指す。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件)
FEBS Journal
巻: (印刷中)
10.1111/j.1742-4658.2012.08538.x
International journal of biological macromolecules
巻: 50 ページ: 236-244
10.1016/j.ijbiomac.2011.10.024