研究課題/領域番号 |
11J02449
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
河盛 誠 京都大学, 工学研究科・工学部, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 金属ナノ粒子 / 金属ナノワイヤ / 液相還元法 / 混成電位 / サイクリックボルタンメトリー / 水晶振動子マイクロバランス |
研究概要 |
金属ナノテキスタイルは、金属ナノ粒子と同様に高い比表面積を有する三次元構造体であり、担体に固着することなく使用できるため、高導電性ナノ粒子担体や、蓄電池用活物質の集電体など、金属ナノ粒子では実現できなかった、新たな用途への展開が期待できる。本研究では、金属ナノファイバー構造化の研究を進め、金属ナノテキスタイル創製のための基礎研究を行う。 ・Niナノワイヤ形成機構の電気化学的解析 金属ナノワイヤの形成過程が、金属のカソード析出および還元剤のアノード酸化の同時反応に帰結されることに着目し、浴中の混成電位をその場測定することで、金属析出反応の駆動力を定量的に評価した。また、作用極に水晶振動子マイクロバランス(QCM)を採用することにより、反応の終点を評価できることを明らかにした。これら電気化学in-situ測定に基づいて、金属ナノワイヤ形成機構を提案し、表面が平滑であり、高アスペクト比を有するNiナノワイヤの作製に成功した。 ・Co-Niナノワイヤ形成におけるNi合金化効果 Co-Niナノワイヤ形成時において,Niとの合金化により、Co-Niナノワイヤの線径は劇的に微細になった。これはCoとNiの酸化還元電位が比較的近いことから、貴金属塩を添加した場合の優先的な核形成による微細化機構では説明できない現象である。そこで、上記の電気化学in-situ測定法を適用し、さらに金属ナノ粒子形成時に進行する酸化還元反応の部分分極曲線をEQCM法を用いて測定した。その結果、NiはCoと比べ、還元剤(ヒドラジン)の酸化反応および金属析出反応に対する触媒活性が低いことがわかった。このことから、Ni合金化によりナノワイヤが微細化した理由は、Niがナノワイヤ成長のインヒビターとして作用したためだと結論付けることができた。また、これら金属表面で進行する電気化学反応は、金属ナノワイヤの形態だけでなく、合金組成分布および結晶構造に大きく影響することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CoとNiそれぞれの金属上での酸化還元反応の電流密度を実験的に計測し、各金属の触媒活性を実験的に定量化することで、Coナノワイヤ形成におけるNi添加効果についての機構を明らかにした。また磁場中でNiの無電解析出を行うことでNiナノワイヤが形成することを、その機構も含め明らかにした。特に後者の研究については、米国物理学会のバーチャルジャーナルに選ばれるなど、高く評価された。最近では、形成機構に基づいた反応浴の設計により、金属ナノテキスタイルの試作にも成功しており、Liイオン電池負極など電極材料への応用にも目途が立ってきている。これらの成果から、研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
H24年度は、本研究で得られたこれらの知見を基に、金属ナノワイヤ形成機構の電気化学的解析を、鉄族金属を中心として包括的に進めるとともに、金属ナノテキスタイルを用いた電極材料等への応用研究を行う予定である。
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