金属ナノテキスタイルは、金属ナノ粒子と同様に高い比表面積を有する三次元構造体であり、担体に固着することなく使用できるため、高導電性ナノ粒子担体や、蓄電池用活物質の集電体など、金属ナノ粒子では実現できなかった、新たな用途への展開が期待できる。本研究では、金属ナノワイヤ構造化による金属ナノテキスタイル創製のための基礎研究を行う。 ・磁場中液相還元法によるNiナノワイヤ不織布の創製 混成電位測定による浴の還元力評価、および水晶振動子マイクロバランス電極による金属析出速度評価により、金属ナノ粒子・ナノワイヤ形成プロセスのモニタリングを試みた。その結果、pHおよび錯化剤添加による金属析出速度制御や、核形成剤添加による核形成頻度の制御を行うことで、高アスペクト比を有するNiナノワイヤが三次元的に絡まりあったNiナノワイヤ不織布の創製に成功した。 ・金属ナノワイヤ不織布の蓄電池電極材料への応用 高容量、高サイクル特性、高レート特性を有するリチウムイオン蓄電池高性能化に向けた、新たな電極設計である「統合型電極」を提案した。統合型電極は、nmオーダーの厚みで活物質が被覆された金属ナノワイヤが三次元的に絡まりあった不織布構造を有している。すなわち、金属ナノワイヤ自体が大きな比表面積を持った集電体の役割を示し、リチウムを取り込む物質で表面被覆することで、反応のための大きな表面積を保持している。これにより、体積膨張/収縮に伴う歪の十分な緩和能力を持つ三次元ネットワーク構造を作製することができ、バインダーおよび導電助剤を用いることなく、Li挿入脱離に伴う体積変化に適した空隙および十分な電子/イオン供給パスを構築し、高容量、高サイクル特性および高レート特性を実現できると考えられる。これを実証するため、NiO被覆Niナノワイヤ不織布を作製し電池試験を行ったところ、従来の合剤電極と比べ、優れたサイクル特性を示すことが見出された。
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