研究概要 |
本研究は、材料表面の残留磁場を測定することで、疲労破壊の原因であるき裂を発見すると共に、そのき裂に加えられた繰返し負荷の履歴を残留磁場の状態から推測し、疲労破壊の危険性を判別する新しい技術を開発することを目的として行った. 磁場観察用の走査型ホール素子型磁場顕微鏡の改良及び性能確認を行った。より高精度な磁場測定を可能にするため、磁気センサと測定物間距離の700μmから350μmに低減した。測定磁場の三次元化のため、測定プローブにセンサフィルムを三方向から取り付け、各方向の磁場を同時に測定できるようにした.その結果、検出磁場の感度に2倍以上の向上がみられた.またき裂進展時に生じるき裂先端の磁場の三次元的形状を捉えることに成功した.これにより従来よりも微小なき裂に対しても磁場観察による損傷評価が可能になり、三次元的なき裂形状及び応力状態の評価に対する磁場観察の適応妥当性の検討も行えるようになった. 次に工具鋼を用いて4点曲げ疲労試験を負荷(初期応力拡大係数範囲ΔK_<N=0>=15,0,12.5,10.0 MPam^<1/2>及び応力比R=0.1,0.4)の異なる条件で行い、各き裂長さ時のき裂周辺の磁場分:布を観察した.その結果き裂長さが同じ場合でも,初期応力拡大係数範囲の大小、つまり負荷の大小によって、き裂進展時に生じるき裂周辺磁場の変化に違いがみられた.また応力比の違いによっても磁場変化に違いがみられた.この結果はき裂を進展させた応力条件により、生じる磁場変化に違いがみられることを示しており、研究の目的である磁場観察から負荷履歴を読み取ることが可能であることを実証した.
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