研究課題
1 ALMAを用いたサブミリ波銀河の観測的研究:サブミリ波で明るい銀河(サブミリ波銀河)は、大規模な星形成活動を行う初期宇宙の銀河であり、宇宙における星形成活動や、銀河の形成・進化を研究する上で重要な天体である。これまで本研究員は、ASTE望遠鏡等を用いてサブミリ波銀河の観測を行ってきた。しかし、望遠鏡の感度や分解能に限界があり、暗い銀河まで観測することができなかった。そこで、研究員らは、初期運用中のAtacama Large Millimeter/submillimeter Array(ALMA)を用いて深い観測を行った。その結果、これまでよりも一桁以上暗い天体を検出することに成功した。この結果を用いて、暗いサブミリ波銀河の性質や、宇宙の星形成活動・背景放射への寄与の研究を行った。現在、この結果を論文として投稿中である。2ハーシェル宇宙望遠鏡データの解析:本研究員は、宇宙航空研究開発機構の赤外線天文観測衛星「あかり」のグループと協力して、南天のAKARI Deep Field South領域における赤外線銀河、サブミリ波銀河の研究を行ってきた。この領域における遠赤外線データを取得するため、イギリスの研究グループと協力し、ハーシェル宇宙望遠鏡での観測提案を行った。2012年に観測が実行され、データが取得された。本研究員は、イギリスの共同研究者の研究機関(Open University)に滞在し、このデータの解析を行った。滞在期間中にデータ解析を終え、検出された天体のカタログを作成した。現在、このカタログを用いた赤外線銀河の研究を進めている。このカタログは、他の望遠鏡のデータと照合して銀河の研究を進める上で重要なものとなっている。また、今後のつい観測でも利用する予定である。3ガンマ線バースト母銀河の星形成活動の解明:ガンマ線バーストは、大質量星の終末に起因すると考えられており、母銀河の星形成活動と密接に関係していると考えられている。母銀河における星形成活動を明らかにするため、本研究員は、母銀河におけるダストに隠された星形成活動や分子ガスの探査を行ってきた。平成24年度には、新たに3つの母銀河について、オーストラリアの電波干渉計ATCAを用いて電波シンクロトロン放射の観測を行った。また、研究員らがALMAに提案を行っていた初期運用観測も実行され、これまでで最も深く良質なデータを取得することに成功した。現在、このデータの解析を行っており、学会や論文等で発表を行う予定である。4国立天文台野辺山宇宙電波観測所45m望遠鏡によりサブミリ波銀河の分子ガス観測:研究員は、サブミリ波銀河が持つ分子ガスの質量、および赤方偏移を探るため、国立天文台野辺山宇宙電波観測所45m望遠鏡を用いた分子ガス観測を行ってきた。初期成果は、論文として出版されている(研究発表3)。平成24年度も、野辺山観測所のプロジェクトの一つとして大規模探査を行った(野辺山宇宙電波観測所遠方銀河レガシーサーベイ)。その結果、複数の明るいサブミリ波銀河から分子ガスを検出することに成功した。今後も観測を継続し、さらにサンプル数を増やして研究を進めていく。
2: おおむね順調に進展している
研究目的を達成するために、研究計画の通り、野辺山宇宙電波観測所やATCAの観測、データ解析を行った。また、Herschel宇宙望遠鏡によって取得されたデータについて、海外の共同研究者と協力してデータの解析を行った。研究はおおむね順調に進展している。
今後も研究目的を達成するために観測、データ解析を進める。野辺山宇宙電波観測所等の観測も予定されており、データ取得、解析を行う。特に昨年度に取得されたアルマ望遠鏡のデータは、世界最高の性能を有し、現在論文化を進めている。
すべて 2012
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)
Astronomy & Astrophysics
巻: 542 ページ: 34,37
Publications of the Astronomical Society of Japan
巻: 64 ページ: 214
Mon. Not. R. Astron. Soc.
巻: 427 ページ: 1830,1846