研究課題/領域番号 |
11J02490
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
黒田 雄介 神戸大学, 工学研究科, 特別研究員DC2
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キーワード | 有機強誘電体 / フッ化ビニリデン / 赤外線センサ / 有機デバイス / 有機薄膜 |
研究概要 |
焦電型赤外線センサの感度向上には、赤外線感受部の低熱容量化により、熱の逃げを抑える手法が有効的である。一般的には、シリコンのバックエッチング等の手法により、基板を薄膜化させることで、素子全体の熱容量を抑えて高感度化を実現している。本研究では、低温成膜が可能な有機強誘電体を用いることで、低熱容量なフィルム基板上への成膜を可能としてきた。数十μm膜厚のフィルム基板上に有機強誘電体薄膜を形成することで、基板材料・センサ部ともに低熱容量であり、有機材料の特徴でもあるフレキシブルなセンサ開発を行ってきた。しかし、基板への熱拡散による感度、応答性の低下を完全に抑えるまでには至っておらず、さらなる基板フィルム膜厚の薄膜化による感度向上を目指すと同時に、特性を最大限に引き出すために基板を持たない自立構造の作製の検討を行った。 焦電材料はスピンコートにて簡便に成膜可能なフッ化ビニリデン-三フッ化エチレン共重合体P(VDF/TrFE)を用いた。P(VDF/TrFE)スピンコート膜を剥離する手法により、膜厚100nm~数μmの自立薄膜の作製手法を考案し、作製した自立薄膜素子におけるセンサ感度、応答性を評価した。フィルム基板(ポリエチレンナフタレートPEN:25μm)上に作製した素子のセンサ特性と比較すると、自立薄膜では全周波数域において電圧感度が高く、特に高周波側では1桁以上の感度向上が見られた。素子部を自立薄膜とすることにより、赤外線感受部の熱容量を低減することで最大感度のみでなく、応答性も向上し、人感センサとして必要とされる1-10Hzの周波数帯域での大幅な感度向上に成功している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
焦電型赤外線センサの高感度化を目的として、センサ構造の最適化を行った。感度、応答性低下の原因であった基板への熱の逃げを最小にすべく、基板をもたない自立構造の作製手法を考案し、そのセンサ評価を行った。その結果、感度の大幅な向上だけでなく、人体検出に必要な1~10Hz帯における感度低下を抑えることにも成功し、当初の予定以上の成果を得ることができている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、焦電係数の高いフッ化ビニリデン低分子量体(VDFオリゴマー)を焦電材料として用いることで、さらなる感度の向上を目指す。今までの研究にて、フッ化ビニリデン-三フッ化エチレン共重合体をテンプレートとしてVDFオリゴマーを成膜することで、分子の構造・配向制御、強誘電性の発現に成功している。その結果をもとに、VDFオリゴマー/P(VDF/TrFE)自立膜を作製することで、大幅な感度向上を目指す。
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