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2011 年度 実績報告書

クモの単眼における「ピンぼけ視覚」の生理学的・行動学的解析

研究課題

研究課題/領域番号 11J02491
研究機関総合研究大学院大学

研究代表者

永田 崇  総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 特別研究員(PD)

キーワードハエトリグモ / 視覚 / 奥行き知覚
研究概要

ハエトリグモの主眼の網膜は、視細胞の光受容部位が4層に積み重なった特殊な構造を持つ。これまでの研究により奥から2番目の層(第2層)は常に"ピンぼけ"であることが示唆され、この発見をもとに「ハエトリグモは主眼第2層で得たピンぼけ像を用いて距離知覚を行う」という仮説を立てた。本研究課題はこの仮説の検証を目的とし、今年度は以下の諸点について実験的研究を行った。
・奥行き知覚の行動学的解析:1)前側眼および片側の主眼を塗りつぶしても正確なジャンプが可能であった。このことから、ハエトリグモは両眼視差などの既知のメカニズムによらず距離を知覚していることが明らかとなった。2)背景光として赤色光を使用した場合、ジャンプ距離は実際の距離に比べて有意に短くなった。これはレンズの色収差のために第2層におけるピンぼけの程度が変化したためと考えられ、仮説を支持する結果であった。また、実測したレンズの焦点距離から求めたジャンプ距離の理論値は、赤色光下で観察されたジャンプの距離によく一致した。これらの結果は仮説を強く支持するものである。
・組織学的解析:1)樹脂包埋した組織の連続切片を作製し、網膜や視細胞感桿分体の分布などを詳細に解析した。これにより、各層の構造などが、先行研究により調べられている種のハエトリグモと同様であることが確かめられた。2)細胞内記録のための予備的な解析として、主眼網膜の連続切片を用いてオプシンmRNAに対するin situ hybridizationを行い、各層の視細胞の細胞体の位置を3次元的に明らかにした。
・視物質・視物質様タンパク質の解析:第2層に発現する視物質Rh1のin vivoでの吸収特性を調べるために、Rh1を視細胞に発現する遺伝子組み換えショウジョウバエを作製した。更にこのショウジョウバエについて、電気生理学的解析の妨げになる眼の遮光色素を遺伝学的に欠損させた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

行動学的解析によりピンぼけを利用した距離知覚メカニズムの仮説を強く支持する結果を得ることができた。これは本研究課題において極めて重要な成果・進展である。

今後の研究の推進方策

23年度は行動学的解析で特に大きな進展があり、今後の研究遂行のための足場固めをすることができた。次年度以降は「ピンぼけ視覚」についてより多角的に検討するための生理学的解析、神経基盤の解析などを進めていく。具体的にはまず細胞内記録法による視細胞の電気生理学的解析のための実験系の確立や、視細胞の神経投射の解析などを行う。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Depth perception from image defocus in a jumping spider2012

    • 著者名/発表者名
      Takashi Nagata, Mitsumasa Koyanagi, Hisao Tsukamoto, Shinjiro Saeki, Kunio Isono, Yoshinori Shichida, Fumio Tokunaga, Michiyo Kinoshita, Kentaro Arikawa, Akihisa Terakita
    • 雑誌名

      Science

      巻: 335 ページ: 469-471

    • DOI

      10.1126/science.1211667

    • 査読あり
  • [学会発表] ハエトリグモの奥行き知覚メカニズムの行動学的解析2011

    • 著者名/発表者名
      永田崇, 小柳光正, 蟻川謙太郎, 寺北明久
    • 学会等名
      日本動物学会第82回旭川大会
    • 発表場所
      旭川市大雪クリスタルホール
    • 年月日
      2011-09-22
  • [学会発表] Characterization and localization of visual pigments expressed in the four-layered retina of a jumping spider2011

    • 著者名/発表者名
      Takashi Nagata, Mitsumasa Koyanagi, Hisao Tsukamoto, Kunio Isono, Kentaro Arikawa, Akihisa Terakita
    • 学会等名
      5th Asia and Oceania Conference for Photobiology
    • 発表場所
      奈良県新公会堂
    • 年月日
      2011-07-31
  • [学会発表] Investigation on wavelength sensitivities and distributions of visual pigments in the four-layered retina in jumping spiders2011

    • 著者名/発表者名
      Takashi Nagata, Mitsumasa Koyanagi, Akihisa Terakita
    • 学会等名
      8th International Congress of Comparative Physiology and Biochemistry
    • 発表場所
      名古屋国際会議場(招待講演)
    • 年月日
      2011-06-04

URL: 

公開日: 2013-06-26  

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