研究概要 |
研究課題の目的は,AID法の最適化を図った上で,AID法(合成生物学)と動物細胞における相同組換えによる遺伝子改変技術(分子遺伝学)とを組み合わせることによって、本技術を転写制御に代わる速やかなタンパク質発現制御システムとして確立し、最終的にはホ乳動物の細胞および個体における遺伝学の発展に寄与することである。現在使用しているaidタグは229アミノ酸(約29kDa)の植物由来のタンパク質である。このタンパク質において分解に必要な最小領域を決定し、タグの大きさを従来の1/3に縮小することに成功した。また同種の酵母類である分裂酵母においてもオーキシンデグロン法が有効であることを示した。さらにニワトリのDT40細胞を用い、従来の相同組換えによる遺伝子破壊と組み合わせることによって、条件特異的にタンパク質の分解を誘導する株を作成し、この株を用いた研究によって、現在、高等真核生物にのみ存在するMcm8,Mcm9およびMCM-BPといった因子の機能解析を行った。しかしながら、Mcm8,Mcm9の株においてはオーキシン添加後、タンパク質は速やかに分解されたが、細胞の増殖には影響が見られなかった。そこで、MCM8,MCM9の各遺伝子に対してノックアウト細胞を作製したところノックアウト細胞を作製することができた。以上の結果はMcm8,Mcm9がMcm2-7とは異なり、DNA複製という細胞の増殖に必須な過程において、重要な働きをしていないことを示している。MCM-BPに対する条件特異的変異株を作製したところ、細胞はオーキシン依存的に増殖を停止し、その時に細胞はG2/M期において蓄積することが明らかとなった。今後、このような条件特異的変異株によって高等真核生物における遺伝学が大きく進展すると考えている。
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