研究課題/領域番号 |
11J02553
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
小枝 圭太 琉球大学, 理学部, 特別研究員-PD
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キーワード | ハタンポ / 分類学的再検討 / 系統 / 生活史 / 生態 / 行動観察 / 夜行性魚類 |
研究概要 |
昨年までの研究でミナミハタンポに琉球列島以南の太平洋広域に分布する琉球型と大隅諸島以北の日本沿岸に分布する日本型の2種に分かれることが示されたが、本年度に小笠原で採集されたミナミハタンポは全て日本型であることが示された。本種は、グナムなどマリアナ諸島からは採集例がないことから、ミナミハタンポは琉球列島から日本列島を回りこんで小笠原諸島へと分布を広げた可能性が示された。 ハタンポ属全体の系統樹を作成した結果、ハタンポ属は3つの大きな系群に分かれることが示された。また、このうちツマグロハタンポを含む硬く、小さい鱗をもつ系群と、Pempheris multiradiataを含む柔らかく、大きい鱗をもつオーストラリア南部の固有種のみの系群は、柔らかく、大きい鱗をもつ最も種数の多い系群よりキンメモドキに遺伝的に近いことが示された。このことから、現行のハタンポ属は3属に分ける必要があることが示された。 沖縄島真栄田岬の洞窟で、日没前にミナミハタンポを採集し、魚体にケミカルライトタグを付けて放流した後、追跡した。その結果、本種は日没が近づくにつれ洞窟の入り口付近へと移動し、日没後に一斉にアウトリーフに向けて移動することが示された。アウトリーフに出た後は、その場に留まる場合とリーフエッジ沿いに長距離を遊泳する場合が観察され、長距離を遊泳する際には、日没後の約1時間で500m以上を遊泳していた。このことから、1日のうちに数㎞もの長距離を遊泳していることが推察された。本研究で示されたハタンポ属魚類の移動生態は、他の夜行性魚類ではみられない行動である。このことから、ハタンポ属は他の分類群と比べて明瞭に異なり、生態系内での栄養塩やエネルギーの移動を行うという特異的な生態学的役割を持っことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
昨年度、美ら海水族館での水槽内観察により得た結果を野外で再現するという目標を立てたが、今年度は、ケミカルライトを魚体につけて追跡するという独創的な手法により、目標である野外での再現に成功することができた。同じく目標であった小笠原諸島での標本採集およびその解析もすすみ、ミナミハタンポを用いたハタンポ属の分散経緯を遺伝学的観点から明らかにすることができた。また、目標達成と同時に、原著論文や学会発表などで多くの研究成果を発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
(抄録なし)
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